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いまさら聞けないHRDXの新常識 | #5

2022年版 人事データアナリティクス推進に不可欠な3つの視点

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 人事データアナリティクスはこれまで、目的・ゴールを明確に絞り込んだスコープでエキスパートに任せる、というアプローチが王道であった。しかし、技術進歩や経験蓄積を通じて近年、「とりあえず」「網羅的に」「ノン・エキスパートが」データを洗う、というこれまでの勝ちパターンと全く異なるアプローチが可能になってきている。新たなアナリティクス戦略の見直しへとつなげていただくため、本稿ではこの3要素の背景を解説する。

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“まず目的・ゴールより始めよ”は今も有効か

 ピープルアナリティクスやデータドリブンなどのキーワードを盛んに目にするようになった2010年代後半、筆者も例に漏れず多くのクライアントから「何かできないだろうか」という相談を受けていた。当時の筆者が言い続けていたことは、本当のところ、自社は何を実現・達成したいのか、そのゴールをまずは明確に設定すること。それがなければ途方もないデータの海に溺れるだけで、逆に1つでも目的化できれば、それをきっかけにDXの取り組みをスタートさせ、検証を経てより高度なこともできるようになっていくだろう、ということだった。

 翻って2022年の現況を見てみると、おそらく9割5分以上の担当者やコンサルタントは、前述の私と大差ないアプローチを取らんとしている。しかし、ご存じのようにデジタル領域というのは特に進歩・変化の激しい領域であり、技術的に5年前と同じ条件ということはまずあり得ない。ゆえに、本来であれば戦い方も見直しが必要になるわけだが、実際には、どのような変化が戦い方に影響を与え得るのか把握できているケースは多くない。そこで本稿では、新たな戦い方を考える上で押さえておくべき直近5年の重要な変化をご紹介したい。かなり大きな変化であるため、新たな戦い方も自然と透けて見えてくるだろう。

5年前と現在の主要な変化点
5年前と現在の主要な変化点
[画像クリックで拡大表示]

変化点①:「とりあえず」のハードル

 5年前のアナリティクスで目的設定が重要だった背景要因の最たるものは、実はストレージや分析にかかるシステムコストであった。例えば、超大手T社のデータウェアハウスを導入する(データの入れ物を用意する)と数億円かかってしまう。それは高すぎるので、他社サービスで既存のストレージを仮想的に統合する(データ分析ツールをシステム横断的に活用する)ことにする。しかしそれも、1分析あたりや1ユーザーあたりの課金制度が敷かれていたため、データ周りの扱いにたけ、かつ「これは多分いける」という分析の目利き力を持った人材がいないと、必然的に費用だけがかさんでいく世界であった。このため、とりあえずデータを集めよう、とりあえず分析してみよう、と気軽には手が出しづらく、結果として「まずは目的を明確にしましょう」となりやすかった。

 それがこの5年で大きく変化している。前述T社も今はデータウェアハウス導入よりクラウド/オンデマンド推し(インフラ導入も高額ではなく、使わなければランニングコストも抑制される仕組み)になっているし、世界的にもデータセンターの増設、リアルワールドデータ活用に向けたインフラ強化、ビッグデータ分析などに耐えるハイパフォーマンス・コンピューティング・サーバーなどの需要が高まることで、性能はより高く、コストはより安く、という方向に向かっている。

 この事実は、端的にいえば、5年前には難しかった「とりあえず」アプローチが取りやすくなってきている、ということに他ならない。試しに「データ連携基盤」という単語で検索すれば、何を分析するでもなく「とりあえず膨大なデータを統合して分析できます」というツール類の紹介や、数々の企業の実例(トヨタ自動車富士通住友生命など)が出てくる。

 「とりあえずアプローチ」はやや乱暴なため丁寧に表現すると、「散在するデータを統合的に扱い、横断的に分析処理するために必要な、システム環境を構築した」例である。この動きはビジネスサイドからのニーズに端を発するため、多くは購買、生産、物流、販売、顧客などのビジネスデータを連携させるものだが、人事領域からすると、このシステム環境に人事データを「とりあえず」でも連携させられるかどうかが極めて重要な問題になりつつある。

 特に日本では、人事情報というのは秘匿性が高く、厳格なアクセス制限の下に独立管理されていることが多い。そのため、とりあえずという中途半端な状態でビジネスサイドのような他ユーザーが閲覧できる環境下に置くことは、原則的に許されていない。それ自体は良いこと、正しいことなのだが、このままではせっかく多くの企業でデータ連携基盤という構想が進んでも、人事だけが蚊帳の外に置かれてしまう。

 先述のとおり、とりあえずアプローチが取りやすくなったのはビジネス側に限った話ではない。例えば、ビジネス周りのデータを仮想的に人事内に移してきて人事データと人事内で連携させる(そして人事外の人にはアクセスさせない)ということも、技術的には十分に可能である。データ連携という大きな流れをうまく捉えて人事データも統合的な分析環境の中に入れ込むこと、これが今の多くの企業で必要な取り組みの一つである。

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この記事の著者

吉田 瑞咲(ヨシダ ミサキ)

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 ピープル・アドバイザリー・サービス/インテリジェンス・ユニット シニアマネージャー外資戦略ファーム、外資人事ファームなどを経て現職。評価・報酬などの人事制度設計と人事データ分析を掛け合わせたデータドリブンな人事高度化支援の経験を豊富に有しており、デ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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