まずは自社の平均値を用いる
たとえば、あなたがA社にいて、課長を対象に360度フィードバックを実施したとします。図表1は、課長全員の結果の平均値をグラフにしたものです。この結果を見て、「戦略形成」「戦略遂行」「コミュニケーション」「人材育成」という4つの行動のうち、どの改善の優先順位が高いと考えるでしょうか。
A社の平均値しか情報がなければ、最も平均値が低い「戦略形成」の優先度が高いと考えるかもしれません。しかしA社では、戦略形成は部長が主に担う役割で、課長が担う役割はその遂行だったとしたらどうでしょうか。課長の戦略形成を行う力の優先順位は必ずしも高くないとも考えられます。
ベンチマークの情報を用いる
ベンチマークの情報を得ている場合には、A社の平均値と比べるのも有効です。図表2には、複数の企業が課長に対して行った360度フィードバックの平均値も記載されています。この結果を見たとき、改善の優先順位が高いのはどの行動だと考えるでしょうか。
ベンチマークより低いのは「コミュニケーション」なので、その改善の優先順位が高いと考えるかもしれません。しかし、A社において、課長の下に係長も配置されていれば、メンバーとのコミュニケーションの主体は係長かもしれません。そうすると、コミュニケーションの改善が最優先と言い切れない場合もあります。
成果を上げている課長の特徴に着目する
ここで、もう1つ別の方法を考えてみましょう。図表3は、A社で成果を上げている高業績の課長と、それ以外の課長の行動を比較した結果です。
両者で差が見られるのは「戦略遂行」ですね。A社では、戦略遂行の巧拙が課長の業績の差につながっていると考えられそうです。自社の職場での成果につながるのであれば、「戦略遂行」の改善の優先度が高いと考えられるのではないでしょうか。
こういった分析は、平均値の差を確認して簡易に行えます。また、t検定などを行い、分析の精度を高めることもできます。