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女性活躍推進法とは? 一般事業主行動計画の策定・届出と情報公表義務


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 近年、15歳~64歳女性の就業率は上昇し、M字カーブは浅くなり台形に近づいてきているものの、働く場面において女性の力はいまだ十分に発揮されているとはいえません。第1子の出産後の就業継続率は約7割と上昇している一方で、35歳以上では非正規雇用割合が増える傾向は変わっておらず、課題が残る現状です。労働人口減や社会経済情勢の変化に適応するために女性活躍推進は急務となっています。本記事では、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の概要と、企業が実施すべき一般事業主行動計画の策定・届出や情報公表義務についてガイドします。

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必ずチェック! ポイント

  • 女性活躍推進法とは、働く女性が個性と能力を十分に発揮して、職業生活において活躍できる社会を実現するための法律
  • 常時雇用する労働者数が101人以上の企業は「一般事業主行動計画」の策定と届出、女性の活躍に関する情報公表義務がある
  • 一般事業主行動計画の策定・届出や情報公表など、一定基準を満たした企業は厚生労働大臣の認定を受けて、企業PRなどに活用可能

関連サイト・資料

3分でチェック! 女性活躍推進法

 女性活躍推進法とは、女性の個性と能力が職業生活の中で十分に発揮できる社会を実現するために作られた法律です。国、地方公共団体、企業それぞれに対して、女性の活躍推進に関する責務を明らかにしています。

 正式名称は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」で、2016年4月から2025年度末までの時限立法として施行されました。少子化対策の法令である次世代育成支援対策推進法と同様に、迅速かつ重点的に推進するよう、法律に明記されている点が特徴です。

 企業が取り組むべき内容は次の2つです。

  1. 一般事業主行動計画の策定と届出
  2. 女性の活躍に関する情報公表

 なお、一般事業主行動計画の策定・届出を行い、自社の女性活躍に関する情報を公表するなど基準を満たしたものは、女性活躍の取り組みが優良な企業として厚生労働大臣の認定(えるぼし認定)を受けられます。

一般事業主行動計画の策定・届出

対象企業

 常時雇用する労働者数が101人以上の企業は義務、100人以下は努力義務となっています。また、労働者数が101人以上300人以下の企業と、301人以上の企業では実施内容が異なるため注意が必要です。

行動計画策定・届出の流れ

 行動計画を策定する流れは、次の4ステップです。

  1. 【基礎項目】【選択項目】に基づいて自社の状況・課題を把握します
  2. 自社の現状と課題にあわせて、行動計画を策定します
  3. 行動計画の内容を社内周知し、指定の方法で外部に情報公表します
  4. 行動計画を企業の最寄りの都道府県労働局に届け出ます

 4ステップの後は、行動計画に基づく取り組みを実施し、効果測定を定期的に行って、PDCAサイクルを回します。また、取り組み状況が優良と認められる企業は、えるぼし認定の申請が可能です[1]

[1]: えるぼし認定の取得方法は、こちらの記事(準備中)で紹介する予定です。

1. 【基礎項目】と【選択項目】に基づいて自社の状況・課題を把握

 最初のステップは、基礎項目4つと選択項目に基づく状況把握と課題の特定です。雇用する労働者数によって、選ぶべき項目が変わるので注意が必要です。

企業規模と義務の範囲

常時雇用する労働者数 実施すること
301人以上
  1. 自社の女性の活躍に関する状況把握、課題分析のため【基礎項目】4つを把握する
  2. 【選択項目】のA・Bからそれぞれ1項目以上(合計2項目以上)を選び、定めた数値目標に対する行動計画を策定。社内周知のうえ公表をする
  3. 行動計画策定について、都道府県労働局長に届出
  4. 【女性活躍の情報公表】のCから2項目以上(うち1項目は「男女の賃金差異」が必須)、Dから1項目以上(合計3項目以上)選び情報公表する
101人以上300人以下
  1. 自社の女性の活躍に関する状況把握、課題分析のため、【基礎項目】4つを把握する
  2. 【選択項目】(A・B全体)から1つ以上の数値目標を定めて、行動計画を策定し、社内周知のうえ公表する
  3. 行動計画策定について、都道府県労働局長に届出
  4. 【女性活躍の情報公表】(C・D全体)から1項目以上を選び情報公表する
100人以下

101人以上300人以下の場合で挙げた14が努力義務

必ず把握すべき【基礎項目】

4つの基礎項目 計算方法
採用した労働者に占める女性労働者の割合 直近の事業年度の女性の採用者数(中途採用含む)÷直近の事業年度の採用者数(中途採用含む)×100(%)
男女の平均継続勤務年数の差異
労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間(健康管理時間)の状況 「各月の対象労働者の(法定時間外労働+法定休日労働)の総時間数の合計」÷「対象労働者数」
管理職に占める女性労働者の割合 女性の管理職数÷管理職数×100(%)

必要に応じて把握する数値目標に関する【選択項目】

A 女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供
◆採用
  • 採用した労働者に占める女性労働者の割合
  • 男女別の採用における競争倍率
  • 労働者に占める女性労働者の割合
◆配置・育成・教育訓練
  • 男女別の配置の状況
  • 男女別の将来の育成を目的とした教育訓練の受講の状況
  • 管理職及び男女の労働者の配置・育成・評価・昇進・性別役割分担意識その他の職場風土等に関する意識
◆評価・登用
  • 管理職に占める女性労働者の割合
  • 各職階の労働者に占める女性労働者の割合及び役員に占める女性の割合
  • 男女別の1つ上位の職階へ昇進した労働者の割合
  • 男女の人事評価の結果における差異
◆職場風土・性別役割分担意識
  • セクシュアルハラスメント等に関する各種相談窓口への相談状況
◆再チャレンジ(多様なキャリアコース)
  • 男女別の職種又は雇用形態の転換の実績
  • 男女別の再雇用又は中途採用の実績
  • 男女別の職種若しくは雇用形態の転換者、再雇用者又は中途採用者を管理職へ登用した実績
  • 非正社員の男女別のキャリアアップに向けた研修の受講の状況
◆ 取組の結果を図るための指標
  • 男女の賃金の差異
B 職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備
◆継続就業・働き方改革
  • 男女の平均継続勤務年数の差異
  • 10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合
  • 男女別の育児休業取得率及び平均取得期間
  • 男女別の職業生活と家庭生活との両立を支援するための制度(育児休業を除く)の利用実績
  • 男女別のフレックスタイム制、在宅勤務、テレワーク等の柔軟な働き方に資する制度の利用実績
  • 労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間(健康管理時間)の状況
  • 雇用管理区分ごとの労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間(健康管理時間)の状況
  • 有給休暇取得率

【女性活躍の情報公表】

C 女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供
  • 採用した労働者に占める女性労働者の割合
  • 男女別の採用における競争倍率
  • 労働者に占める女性労働者の割合
  • 係⾧級にある者に占める女性労働者の割合
  • 管理職に占める女性労働者の割合
  • 役員に占める女性の割合
  • 男女別の職種又は雇用形態の転換実績
  • 男女別の再雇用又は中途採用の実績
  • 男女の賃金の差異(301人以上の企業は公表義務あり
D 職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備
  • 男女の平均継続勤務年数の差異
  • 10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合
  • 男女別の育児休業取得率
  • 労働者の一月当たりの平均残業時間
  • 雇用管理区分ごとの労働者の一月当たりの平均残業時間
  • 有給休暇取得率
  • 雇用管理区分ごとの有給休暇取得率

2. 一般事業主行動計画の策定・届出

 1.で算出した数値をもとに課題を特定し、自社の一般事業主行動計画を策定します。行動計画には、必ず次の4項目を含めます。

  1. 計画期間
  2. 数値目標設定
  3. 取組内容
  4. 取組の実施時期

3. 社内周知・公表

 策定した一般事業主行動計画を、自社のすべての社員に周知します。周知方法は、イントラネット(企業内ネットワーク)への掲載や、事業所内の見やすい場所への掲示、電子メールでの送付、書面での配布などが一般的です。

 加えて、自社のホームページや厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」にて、外部公表を行います。

4. 行動計画の届出

 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に、「(様式第1号)一般事業主行動計画策定・変更届(女活法単独型)」を提出します。また、女性活躍推進法と次世代育成支援対策推進法の両法律の要件を満たし、かついずれの計画期間も同一の場合は、「(様式第2号)一般事業主行動計画策定・変更届(女活法・次世代法一体型)」の書式で提出できます。両様式は厚生労働省サイトの「一般事業主行動計画の策定について」からダウンロードできます。

 なお提出は、労働局への持参・郵送だけでなく、e-Gov電子申請でも可能です。

公表・実施状況(令和5年)

 厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」には、2023年10月現在、4万3401社が行動計画を公表しています。内訳は次のとおりで、努力義務となっている100人以下の企業も積極的に取り組んでいることが分かります。

<公表社数>
  • 301人以上:1万3510社
  • 101人以上300人以下:1万8134社
  • 100人以下:1万1757社

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この記事の著者

横内 さつき(ヨコウチ サツキ)

中小企業の採用コンサルタント/人事労務・金融など専門領域の編集者・ライターとして活動する複業フリーランス。パーソルキャリアで求人広告営業、人材系スタートアップにて子育て世代や外国籍向け人材事業を経験。生命保険やカフェ店長、Web制作会社など、異業種の経験も豊富に持つ。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

内山 美央(ウチヤマ ミオ)

うちやま社会保険労務士事務所 代表。新卒3年目で社会保険労務士資格を取得。人事ベンチャーにて勤怠管理システムの導入コンサルティング、大手イベント会社の人事部にて人事制度改革や労務DX推進に携わる。独立後は経験を活かし、IT導入やテレワーク・フレックスタイム制など、社員が働き続けたくなる会社づくりを支援。

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