「人事は経営そのもの」という意識で、緊張感をもって採用にあたる
――実際の採用活動にあたって、人事担当者が注意すべきことは何でしょうか。
現場に遠慮して、人事部の人間だけで採用を回さないことですね。配属部門の業務や人との相性は良いか、会社のカルチャーにフィットするかはとても重要なポイントになります。それだけに、採用プロセスに現場の人や経営層を巻き込まないと、採用はうまくいきません。ねらいどおりの人材を採用できる会社とそうでない会社がありますが、後者は現場の意向や経営者の考えが採用の過程に反映されないことが影響していると思います。
どんなに優れた人材でも、いざ仕事に加わったときに、うまくコミュニケーションできるか、スキルや経験が会社の成長にコミットできるかどうかは、やはり現場の人や経営層を巻き込まないとなかなか分かりません。直接面接などはできなくても応募者にmeetup(業務外の気軽な集まり)へ参加してもらったり、普段から現場の人や経営層とコミュニケーションを取って選考のポイントを共有したりしましょう。それが、入社後のミスマッチを防止することにつながります。
――たしかに知識やスキルがあっても、中に入ってうまくやれないのでは、「仕事ができる」人材とはいえませんよね。
はい。そのため、最近ではスキルだけでなく、人格を重視する会社も増えてきています。スキルは後からでも身に付けられますが、人間の性格は基本的に変わらないからです。学歴、経歴、業務実績といったスペックだけで採用するというのは、入社後のトラブルなどのリスクが大きいといえます。
――履歴書だけでなく、応募者の人柄や性格まで見極めるとなると、人事担当者自身にも、相応の眼力やコミュニケーション能力が求められてくるのでしょうか。
「人事は経営そのもの」であることを強く意識して、単に採用業務というオペレーションとして回してしまわない緊張感が必要です。
また、採用面接を「見極めの場」だと思わず「ファン化の場」として実施することも重要です。有名企業や大企業の人事の偉い方は一方的な見極めをやってしまいがちですが、自社に興味を持ってくれた一人ひとりとラ・ポール(打ち解けた関係)を築くつもりで面接に臨んでほしいと思います。
――なるほど。では、自社の採用を成功させるために、どんな人を配置したらよいでしょうか。
実は、人材採用がうまくいっている会社は、採用担当に自社のエース社員を置いているんです。つまり、自社の事業を深く理解し、会社のことが大好きで仕方のない人を採用担当者に任命するのです。ところが、多くの企業は、採用は利益に直結しないからと、そこそこの人を回します。これが失敗のもとなんです。
私はよくお客様に、「採用担当にエースを置かないと、そのエース以上の人材は来ない!」とお話しします。同時に「その判断ができるのは、社長しかいない!」とも。でも、経営者は売上を上げている社員をなかなか採用担当に回そうとはしませんよね。そこで人事担当者が社長や経営陣を説得する際に有効なのが、成功している会社の事例です。「○○社はエースを置いてすばらしい人材を獲得している」といった事実は、なによりも強い説得力になるからです。
――今は転職サイトや口コミサイト、SNSなどで会社への評価や評判がすぐに広がります。これを上手に活用すれば、優秀な人材へのアピールになると思うのですが。
おっしゃるとおり、自社のPRやファン作りは採用にも有効です。ただし、いかに継続するかがポイントです。情報感度の高い人ほど、WebサイトやSNSなどの情報の鮮度には敏感です。始めてすぐに中断してしまうようでは、かえってマイナスの印象を与えかねません。また。そうしたPRではメディアを利用することが多いので、最適な媒体を選定するノウハウも必要になってきます。
ITを使って「いい思い」を体験することが人事採用の意識を変える
――ワミィはまだ立ち上がったばかりの会社ですが、設立のコンセプトである「ITと人事を近づける」ために、今後どのような取り組みを続けていくのか、抱負をお聞かせください。
まず、人事に携わる方々の、ITについての底上げを支援していきたいですね。労務、総務、人事それぞれの担当者が、ちょっとITの知識を持っているだけで、自分の環境や見えるものが大きく変わってくるはずです。先にお話ししたような人事業務の効率化や、応募者データの分析による人事戦略の改善、タレントプールのような人材データベースの活用、そして応募者の能力やキャラクターの確認といったさまざまな側面で、ITの知識は大いに役に立ってくるでしょう。
――まさに人事とITを近づけることで、人事担当者やその会社の採用能力のパワーアップを図るというわけですね。
そうです。そのために、まず人事担当者のITの引き出しを増やしていくお手伝いをしていきたいです。もちろん、それには担当者が自ら情報を集め、いろいろなITサービス、ツールを試す必要があります。ご自分で使ってみるというのはとても大切なんですよ。そして、便利になったり仕事の質が上がったりして、ITがもたらす「いい思い」を、人事・採用担当の方々にどんどん体験していただきたい。そのために私たちのできることは何かを、お客様と一緒に考えていきます。
――これから先、どんな新しいコンセプトやサービスが出てくるか、とても楽しみです。今日は、貴重なお話をありがとうございました。