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インタビュー | ワミィ株式会社 代表取締役 伊藤和歌子氏

採用担当に現場のエースをあえて置くのが成功の方程式、応募者データの管理も優秀な人材獲得への第一歩


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どの企業も欲しいのはエンジニア+αの人材、そのαのスキルとは?

――採用支援や人事コンサルティングを手がけていて、今はどんなエンジニアが最も企業に求められていると感じますか。

 長く活躍できる人材は、単なる「エンジニア」ではなく、例えば「エンジニア×経営」のような、エンジニアとしてのスキルに加え何らかの付加価値を持っている方ですね。典型的な例としては、CTO(最高技術責任者)を務められるような方ですが、そのようなタイプの人材が一番いないのも事実です。

 もちろん経営だけでなく、英語力でもいいし、「ジンジニア」という言葉もあるように「エンジニア×人事」もアリだと思います。また、エンジニアでも特にセキュリティに強い人は有利ではないでしょうか。どこの企業も、セキュリティ人材は不足しています。あとは、アプリケーションもわかる上にネットワークもわかるとか。資格があれば、さらに有利ですね。セキュリティなら登録セキスペ(情報処理安全確保支援士)とか、ネットワークならシスコ技術者認定などは、自分のスキルをわかりやすく示せてよいと思います。

――エンジニア本来のスキルとしては、現在は何が求められていますか。

 昔は「エンジニア=作る人」でしたが、今は「作れるだけでなく、上流も下流も両方できるエンジニア」が求められていると感じます。なぜかというと、技術がコモディティ化してきているので、作れるだけの人は珍しくない上、ビジネスの現場では作れるのは当たり前とされ、期待値は以前よりも高くなってきています。そもそもITは課題解決のための手段なので、課題を正しく理解し、その解決のために必要なスキルを幅広く持つことが重要です。

また、最近はテクノロジーが手軽に扱えるようになった分、上流と下流の両方のスキルを兼ね備えることが、以前ほど難しくなくなりました。そのため、下流しかできないと価値は目減りするし、両方できる人が高品質なソリューションを提供する中、上流しかできないと細部がおざなりになります。与えられた課題どおりに作るのではなく、そもそも課題設定として正しいのかどうかまで突き詰めて考え、ITでビジネス価値をもたらす能力が、エンジニアの本来のスキルとして求められていると思います。

――世の中では、今や「第3のプラットフォーム変革期」といわれています。ここではクラウドやIoT、ビッグデータ、ソーシャル分析などの広汎な周辺技術が求められます。これに対してエンジニアは、どう自分のスキル戦略を立てていったらよいでしょう?

 例えば、データ分析などの専門技術などがあれば、もちろん有利だと思います。しかし、より重要なのは、自分の持っているスキルで、企業や組織のビジネスにどう貢献できるかです。

 クラウド、IoT、ビッグデータ、ソーシャル分析などの新しい技術も、基礎知識として理解しておくことは重要です。しかし、やはりそれらも手段であることに変わりはありません。先に述べた課題解決の手段として使いこなせなければ意味がないのです。ただ、残念ながら、クラウドやビッグデータに詳しいだけの人はこれからどんどん増えるでしょう。

「クラウド、IoT、ビッグデータ、ソーシャル分析などの新しい技術も、課題解決の手段として使いこなせなければ意味がありません」(伊藤氏)
「クラウド、IoT、ビッグデータ、ソーシャル分析などの新しい技術も、課題解決の手段として使いこなせなければ意味がありません」(伊藤氏)

外注の導入やITツールの導入など採用側も変化

――今度は、人材を採用する企業側についてお聞きします。長らく日本の企業の人材戦略は、新卒を中心に採用して社内で育てる風土が続いてきましたが、慢性的な人手不足が続く中で、外注化=アウトソーシングの流れが加速しています。

 アウトソーシング化は急速に進んでいますが、全部まかせるのではなく、重要な部分はこれまでどおり自社で、それ以外は外部に任せるといった切り分けが必要になってくるでしょう。

 もし、何でもできる人を採用して全部自社でやろうとしても、果たしていつそんな人が来るのか誰もわかりません。外注化はその点でも現実的な選択肢です。

 また、外部委託への抵抗感は少なくなってきます。いろいろなワークスタイルの方がいますし、スキルを持った方々がそうした多様な働き方を選べるよう、企業の側から支援する動きも出てきています。私が主催している人事 to IT カイギのコミュニティでも、そういう話題が盛んに話し合われています。

――もう少し踏み込んで、人材を採用する企業側が改善すべきことがらを、いくつかキーワードとしてお聞かせいただけますか。

 今、「採用管理システム」を導入する企業が増えていますが、うまく使えていないケースが見受けられます。そもそも、人事業務のシステム化自体が進んでいるとはいえないのが実情です。新卒採用なら、リクナビのRICSような広く使われている管理支援サービスがありますが、中途採用だと、いまだにExcelシートで応募者のリスト管理をしている会社がたくさんあります。これでは、応募の現状把握も分析もできない。分析ができなければ、今後に向けた採用のPDCA戦略も立てられません。

 また、大事なのは先述したように「何のために採用するのか」、つまり人材戦略を最初に立てること。ツールを使うなら、その戦略を実現するために最適なものを探します。Redmineのような本来採用管理システムではないツールを自社でカスタマイズし、採用の管理に使っている例もあります。「システムありき」ではなく「戦略ありき」に意識を転換してください。

――人材のデータベースが整備されていれば、応募してきた人が自分の会社の戦略に貢献してくれそうか、まだ具体的にどんな貢献ができるかも「見える化」できますね。

 人材のデータベースといえば、今「タレントプール」という採用手法が注目を集めています。これは常に「いいと思う人」や「過去にご縁がなかった人」、さらには「辞めた人」などを、自社の人材データベースとして登録しておくのです。そうやって直接の応募者ではないけれど、スキルのある人や見どころのある人をふだんからプールしておけば、いざ「人材を探せ!」となったときにも、ゼロから探していく必要がなく困らないのです。

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「人事は経営そのもの」という意識で、緊張感をもって採用にあたる

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この記事の著者

工藤 淳(オフィスローグ)(クドウ アツシ)

出版社や制作会社勤務の後、2003年にオフィスローグとして独立。もともと文系ながら、なぜか現在はICTビジネスライター/編集者として営業中。 得意分野はエンタープライズ系ソリューションの導入事例からタイアップなど広告系、書籍まで幅広く。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

市古 明典(IT人材ラボ ラボ長)(イチゴ アキノリ)

1972年愛知県生まれ。宝飾店の売り子、辞書専門編集プロダクションの編集者(兼MS Access担当)を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集に参加。その後、資格学...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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