なぜ組織開発には「内部の実践者」が重要なのか
ZOZOにて組織開発責任者、SNSで組織開発エバンジェリストとして活躍する一方、STANDBY代表としても組織開発ファシリテーターを務める小金氏。本講演は、「内部の実践者の、内部の実践者による、内部の実践者のための『組織開発』」をテーマに、組織開発に関する9つの質問に対して小金氏が回答するQ&A形式で進められた。
Q1:どんなことをやってきた人ですか?
まず1つ目は、小金氏のキャリアに関する質問だ。小金氏はもともとビジネスサイドからキャリアをスタートしている。

小金 蔵人(こがね くらと)氏
株式会社ZOZO 人自本部 組織・人材開発部 ディレクター/STANDBY 代表
1998年に味の素株式会社に入社し、近畿・四国エリアの営業マーケティングを担当。2006年にヤフー株式会社(現・LINEヤフー株式会社)に転職、新規ビジネス開発・サービス企画のリリースを経験。2016年に希望して人事部門に異動後、全社の人材開発・組織開発を担当。1on1ミーティングをはじめとしたピープルマネジメントツールの推進や管理職のマネジメント支援とあわせて、現場の組織課題解決をサポート。2020年に株式会社ZOZOテクノロジーズ(現・株式会社ZOZO)へ転職し、現在は全社の人事企画・人材開発・組織開発に携わっている。※ZOZOでは、人事を「人自(じんじ)」と表記。「人自」は「人のことを自分のことのように考える人事」という意味に由来する。
「最初に在籍したヤフーでは、所属していた事業部門の組織活性から取り組みはじめました。それが高じて専門チームに異動し、組織の課題解決支援やチェンジエージェント(現場組織で組織開発を推進する担当者を立てる)施策、可視化プロジェクト、組織サーベイ運営など組織活性の施策や、1on1およびオンボーディングの強化、社員のキャリア自律支援など、いわゆる人材育成の施策を行っていました」(小金氏)
その後、ZOZOでは組織開発の専門チームを立ち上げるとともに、コロナ禍でリモートワークが広がる中で、全社員を対象としたヒアリングや全社課題の発見と解決の支援に乗り出した。さらには、バリューの策定や開発業務のプロセス改善、人材開発も手掛けている。個人事業主としても組織開発や人材開発の支援を行っており、管理職研修なども担当しているという。
Q2:組織開発とは何ですか?
2つ目の質問は、組織開発の定義について。小金氏によると、組織開発論の権威と呼ばれるウォリックは「組織開発とは、組織の健全性・効果性・自己革新力を高めるために、組織を理解し、発展させ、変革していく、計画的で協働的なプロセスである」と定義付けているという。
これを受けて小金氏は、より分かりやすく、次のように説明した。
「組織開発とは、『共通の目的に向かうチームになるための働きかけ』だと捉えています」(小金氏)
組織開発という言葉を分解すると「組織」と「開発」になる。組織とは、集団ではなくチームを指す。同じ目的に向かう協働体、情報の網、共同体、生命体にもたとえられる。一方の開発とは、英語で「Development」といい、発展・進化を意味する。無理やり、第3者によって変えられるのではなく、あくまでも内心に気づいて目覚める、本来持つ能力を発揮すること、そのために周囲がサポートすることなどを表すのだと小金氏は解説した。


「この意味で捉えると、組織開発の本質は『7つの習慣』でいうところの「インサイド・アウト(内から外へ)」だといえます。自分たちの組織を、中にいる人たちの手でより良い組織にしていくこと。だからこそ、今回のテーマとなる『内部の実践者』という立ち位置が必要なのです」(小金氏)
「何をやるか」の可視化に有効なマンダラ図
Q3:具体的に何をしていますか?
3つ目の質問から、組織開発の方法論に入っていく。小金氏が組織開発の対象としているのは、全社や部門、チーム・プロジェクト単位、1対1の関係性、個人など多岐に及ぶ。当然ながら、レイヤーに応じて働きかけるテーマは変わる。なお小金氏は、人材開発も組織開発の1つと考えて、同時に取り組んでいるという。

そして小金氏は、組織開発において「8つの習慣」を実践していると紹介した。全社の組織開発、部門の組織開発、人事制度の企画・設計・運営、情報の流通、管理職の育成、社員のキャリア自律支援、取り組みの可視化、最後がそのときに応じた旬のテーマだ。
そして、この8つの習慣をマンダラ図に落とし込むのが、小金氏独自の手法である。
「組織開発をセンターに置き、その周囲に8つの習慣を割り振り、さらにそれぞれの外側に具体的な施策を8つずつ書き並べ、合わせて64つの打ち手を可視化しています」(小金氏)

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このマンダラ図は、目的やフェーズごとに打ち手をチューニングすることで、「今何をやっているか」「これから何をすればよいか」をつかめる非常に有効なフレームだ。小金氏は「ぜひ活用してほしい」と呼びかけた。