リクルートマネジメントソリューションズは、社会人1〜2年目の正社員に対して「学生のキャリア選択と入社後の状態に関する意識調査」を実施した。
就職活動開始時の志望度と内定獲得時の入社意欲の変化
新卒で入社した企業について、就職活動を始めた当初の志望度と、内定獲得時の入社意欲をそれぞれ振り返ってもらい、5段階評価の組み合わせを集計した。
就職活動を始めた当初の志望度と内定獲得時の入社意欲について質問したところ、内定獲得時に入社意欲が高い人のうち、就職活動開始時から志望度が高かった人(A群)の割合が最も高く、全体の47.1%であった。一方、当初の志望度が低かったものの入社意欲が向上した人(B群)は27.5%で、志望度、入社意欲ともに中低群のままだった人(C群)は22.7%であった。
志望度と入社意欲の変化と、採用プロセスの関係
志望度と入社意欲の変化のA~Cの3群ごとに、「新卒入社の会社」の採用プロセスに関する17項目に対して影響が見られるか確認したところ、A群とB群とで、各項目の平均値に統計的に有意な差は見られなかった。
当初、志望度は同じ中・低であるにもかかわらず、最終的な入社意欲が変化したB群とC群を見ると、「10.面接などの接点で、温かく迎えてくれた」「12.面接などの接点で、話したいことを話せた」「6.採用活動における各種のやり取り(合否連絡など)が手際よく迅速だった」「11.面接などの接点で、自分のことを掘り下げて、よく理解しようとしてくれた」という項目で大きな差が見られた。
学生のキャリア選択の状態
内定受諾時点のキャリア選択への納得感の状態について確認するために、主体的に決定できているか、選択について納得しているか、明確な選択基準があったかという観点で評価してもらったところ、「とてもあてはまる」「あてはまる」を選んでいるのは21~35%、「ややあてはまる」まで合わせると、5~6割が肯定的な回答だった。
約7割の人は主体的に意思決定をしており、入社することに納得はしているが、自分がやりたいことや将来の道筋が明確かどうかは五分五分であった。
キャリア選択への納得感が、入社後の状態に及ぼす影響
入社後の状態に関する6つの指標を、キャリア選択への納得感の得点群別に集計し、高・中・低群間で得点差が大きい順に並べた。高・低群で得点差が大きいのは「1.勤続意向」「2.心身共に健康的に働いている」「3.組織コミットメント(目的・愛着)」であった。
キャリア選択への納得感の高・中・低群で納得感に差があるかを調べ、その後多重比較を行ったところ、すべてのグループ間において統計的に有意に差があることが確認でき、内定受諾時点のキャリア選択意識が入社後の状態に影響することが示された。
働くことへの理解度と入社企業への評価が、キャリア選択への納得感に及ぼす影響
新卒入社した企業についての理解度、入社企業での働くイメージの程度、入社企業への信頼感、期待の程度の4観点について尺度化し、それらの高・中・低群別にキャリア選択への納得感を集計した結果は、どの観点も高群が突出して納得感が高く、高群と低群、高群と中群の差は、すべて統計的に有意な差が確認された。
すべての尺度で高・低群による差が見られ、特に「3.入社企業への信頼感」「4.入社企業への期待」の項目において、高・低群による大きな差が開いた。
インターンシップへの参加と、納得感・働くイメージの醸成との関係
インターンシップへの参加有無とキャリア選択への納得感の関係を見るために、「1.参加(就業体験あり)」「2.参加(就業体験なし)」「3.不参加」の3群に分けて、キャリア選択への納得感を高・中・低群の割合を示した結果、インターンシップに参加するほうがキャリア選択への納得感が高かった。その中でも就業体験を伴うほうが、納得感が高い結果となった。
就業体験の有無が入社企業で働くイメージのしやすさとも関係し、最終的なキャリア選択への納得感の高・中・低にも関係している。
就職活動中のキャリア探索行動がキャリア選択への納得感に及ぼす影響
「自己探索」は自分のことを客観的に理解することで、就職活動の自己分析にあたり、「環境探索」は働くことや職業や業界についての理解を深めるための情報収集や対話・体験をするインターンシップや仕事分析・業界研究にあたるが、自己探索・環境探索ともに高群のほうが、キャリア選択への納得感が高かった。
採用プロセスがキャリア選択への納得感に及ぼす影響
新卒入社した企業の採用プロセスの特徴に関する17項目それぞれについて、あてはまる程度の高い高群とそうでない低群別にキャリア選択への納得感の差を比較した。その結果、「豊富な接点」「適切な手続きや基準」「オープンなやり取り」「社員からのフィードバック」のすべてのカテゴリー・17項目について、高群が低群よりも高かった。
高・低群の差が大きい項目に着目すると、「12.面接などの接点で、話したいことを話せた」「11.面接などの接点で、自分のことを掘り下げて、よく理解しようとしてくれた」「14.あなたのキャリアを支援するスタンスが感じられた」「10.面接などの接点で、温かく迎えてくれた」が相対的に高く、オープンなやり取りが納得感の醸成に大きく貢献していた。
項目16・17の「社員からのフィードバック」は、「入社意欲の向上」の設問では関係が見られなかったものの、納得感の醸成には影響していた。
就職活動はどのような経験だったか
就職活動はどのような経験だったと認識されているか確認したところ、「1.非常に楽しく、総じてよい思い出となる経験だった」が10.0%、「2.成長の機会になるなど、自分にとって意味のある経験だった」が44.0%と、合わせて54.0%が比較的ポジティブに受け止めている。
なお、「3.自分にとっての意味はあまり感じられないが、社会人になるためには必要な経験だった」とフラットに受け止めている人が19.6%、ネガティブに受け止めている人が25.4%だった。
よりよい就職活動・採用活動のために必要なこと
新卒での就職活動・採用活動が、学生と企業にとってよりよいものになるために、どんなことが必要だと思うかを聞いたコメントを抜粋すると、「自社の魅力だけでなく悪い情報も含めてありのままを伝える」や、企業側が学生との「対等なスタンス」をもつことを求める声が寄せられた。学生側には、「働くイメージの明確化」「深く具体的な企業理解」「選択肢を広げる」ことの重要性を指摘する意見が寄せられた。
なお、調査の概要は次図のとおり。
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