組織や個人の状態を理解するためにサーベイを導入
——御社では現在、従業員サーベイとして半期に1度の「MFグループサーベイ」(以下、グループサーベイ)と月次の「MF Selfie Map」(以下、Selfie)を行っています。それらを始めたのはいつからですか。それぞれの目的は何でしたか。
グループサーベイは2016年にスタートし、Selfieは2021年からです。まずグループサーベイは、働きやすさと働きがいが両立した環境をつくっていくためにも、現状を正しく理解したいという目的でスタートしました。背景としては、社員数が増えてきて、1人ひとりの声を拾いづらくなっていたことがありました。組織崩壊が起きてしまった、組織絡みの問題があったというわけではありません。
グループサーベイは3ヵ月に1回、組織の健康診断という形で実施しています。ただ、数字が平均で出るので、1人ひとりの状態は分かりませんし、深掘りも難しかったんです。そこで、個人の状態も見えるようにしたいということでSelfieを始めました。
もう1つ付け足すと、上長とメンバーとがコミュニケーションを図るきっかけにしてほしいと考えました。実は、人事に対して社員からいろいろな相談が寄せられていたのですが、多くの人は上長に何も相談していませんでした。「こんな悩みを持ち掛けてよいのか分からない」というのが理由でした。それならば、メンバーの悩みが反映されたスコアを見てもらおうと思ったんです。
そのため、Selfieは実名での回答となっていて、上長も人事も各メンバーのスコアを把握できます。もちろん、人事向けのコメント欄も用意されていて、上長に分からないように相談することも可能です。

竹内 富貴(たけうち ふき)氏
株式会社マネーフォワード People Forward本部 副本部長
新卒で人材紹介会社へ入社し、キャリアコンサルタントとしてキャリア支援に携わる。その後、IT企業や食品メーカーで人事として採用や人事制度改定、組織開発などを経験し、2021年マネーフォワードに入社。人材育成施策の企画・運営や人事制度改定、組織開発など多岐にわたるプロジェクトに携わる。2023年より現職。
——グループサーベイとSelfie、それぞれどのような設問が用意されているのですか。活用法も教えてください。
グループサーベイの設問数はおよそ35です。「業務・部署・やりがい・会社全体・経営陣・多様性」という6つのカテゴリがあります。たとえば、部署カテゴリには「自分の本部ではナレッジシェアを通じ、より良い業務設計のヒントを得られているか」、経営陣カテゴリには「経営陣は意思決定の背景やプロセスを十分に説明しているか」という設問があります。基本的には大きな変化はないものの、設問内容は毎年見直しをしています。直近では、部署ごとのAIの活用状況を見える化するための設問を織り込みました。
グループサーベイで経営陣に寄せられたコメントは毎回整理して、会社の現状や課題、改善施策などを全社に向けたメッセージとして公開しています。それを受けて、各本部長が前回のアクションプランに対する振り返りと課題提示、次半期に向けたアクションの設定を行います。また、サーベイの指標は会社の目標設定にも反映しており、その目標設定は本部・部・個人にブレイクダウンされていきます。この目標設定は12月と6月に行っています。
本部のスコアが良くなかった場合には、人事もサポートしながら組織を良くするためのPDCAを回していきます。
一方、Selfieの設問数は20です。「働きがい・成長実感・コミュニケーション・上長との関係性」など4つのカテゴリがあります。母体である「wevox」が設定している設問がほとんどですが、当社でも1on1に関する設問と人事向けのコメント欄などを追加しています。
サーベイ結果の活用に関しては、かなり力を入れています。たとえば、前月からものすごくスコアが低下したメンバーがいた場合には、上長に自動で通知が行く仕組みをデータアナリスト部門と連携して構築しました。もちろん、人事でも気になる方には面談をしています。
他にも、人事向けに届いたコメントをすべてチェックし、内容や緊急度に応じて適宜フォローしています。また、組織における活用法を啓蒙するために、新任のマネージャーにはSelfieをどう使えばよいか、どういった指標に気をつけたらよいかなどを説明したり、メンバーのスコアが下がったときにはケースに合ったアプローチ例を紹介したりしています。
——上長に通知が行く仕組みは役立ちそうですね。
そうなんです。マネージャーの中には、メンバーの悩みになかなか気づけない人もいたりします。たとえば、Selfieでキャリア関連のスコアが下がっていたら、その通知をきっかけにメンバーに最近の調子を聞くことができます。それを機にコミュニケーションが生まれることもありますし、メンバーからすると気にかけてくれていると分かるとうれしいものです。
当社にとって、メンバーが働きがいを持ってポテンシャルを発揮できる状態をつくっていくことは大きなテーマです。これからも人事データの活用には積極的に取り組んでいきたいと思っています。