多大なメリットをもたらす統合型HRシステムとは
4つ挙げた注目の人事施策の実現に向けて山﨑氏が示したのが、「HRシステム統合における人事戦略」の有効性だ。従来の人事システムは、労務管理や勤怠管理、給与計算、タレントマネジメントなどのシステムが個別最適で導入され、統合的な運用ができていないケースが多い。当然ながら、管理工数が大きく、データも分散してしまうので、従業員にとっての利便性や満足度は低いといわざるを得なかった。

これに対して山﨑氏は、「理想の状態は、従業員データを一元化しリアルタイムに活用することです。それは、統合的・戦略的な人的資本経営を推進できる状態と言い換えられます」と指摘した。
たしかに個別最適なシステムだと、ID・UI・操作性がシステムごとに異なるため、利用者の生産性や満足度が低く、システム管理者も問い合わせ対応などに追われてしまう。一方、理想の状態ではID・UI・操作性が統一されているため、利用者の生産性や満足度を高いレベルで維持でき、システム担当者の問い合わせ対応も少なく済む。

また、管理者の視点で見てもメリットは大きい。個別最適なシステムだとシステムごとにデータベースがあるため、入社・退社や異動のたびに複数のシステムで同じ従業員データを入力する作業などが生じてしまい非効率だ。それがデータベースが一元化(1つに統合)された理想の状態では、従業員データの登録・変更は1度で済む。その分、本来費やすべき戦略的業務に時間を投下できるようになる。

さらに、経営者の視点でも多大なメリットがある。個別最適なシステムでは従業員データがバラバラに存在するため、部分最適な意思決定になりがちになるうえ、リアルタイムでデータを見られず判断のスピードも遅くなってしまう。一方、理想の状態だと従業員のあらゆる情報が一元化されているため、一貫した全体最適な意思決定を行いやすく、しかもそのスピードも速くなる。
