2適切な設問設計
組織サーベイの価値は、どのような設問を用意するかによって大きく左右されます。設問は単なる質問文ではなく、「会社として何を大事にしているか」を従業員に伝えるメッセージにもなり得ます。
そのため、設問によっては従業員に期待を抱かせることもあります。その後に何のアクションもなければ、逆に信頼を失うことにつながりかねません。設問そのものが期待値コントロールのツールになるという意識は欠かせないでしょう。
設問設計の基本方針
設問設計のアプローチは、大きく2つに分かれます。
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- 組織として大事な要素を確認する
- 経営理念や人材育成方針など、組織が強調したい観点を反映した設問を用意します。
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- 網羅的に課題を洗い出す
- 特定のテーマに限らず、幅広く組織の状態を調べたい場合には、既存の標準的なサーベイフレームワークを活用することも有効です。
「組織として大事な要素を確認する」アプローチは、組織ビジョンや価値観などが現場でどれだけ浸透しているのかを測るのに有効です。経営層が大切にしたいと思うテーマを確認する設問を設計することで、戦略との整合性をチェックできます。
「網羅的に課題を洗い出す」アプローチは、どこに課題が潜んでいるかまだ分からないときに適しています。網羅的に聞くことで、予想していなかった改善ポイントが見つかる可能性があります。特に、初めて組織サーベイを導入する組織では有効です。
もちろん、これら2つを組み合わせることも効果的です。まずは網羅的に全体像を把握しつつ、「組織として特に注目したいテーマ」に関する設問を追加するというやり方で、全体の課題を見逃さずに、経営戦略とリンクした重点項目も同時に確認できます。
NG設問から学ぶ、設問設計の注意点
組織サーベイの設問は、一見すると単なる質問の羅列に思えますが、実際には設問そのものが従業員へのメッセージになることがあります。作り方を誤れば、正しい判断ができないどころか、従業員との信頼関係を損なうことにもつながります。
では、組織サーベイでありがちなNG設問とその注意点についていくつか例を挙げます。
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- 曖昧な質問
- 「働きやすい環境ですか?」といった質問がこれに該当します。何をもって「働きやすい」とするかは人によって基準が異なるため、データとして比較することが難しくなります。こういった場合には、「業務に必要な設備が十分そろっている」「同僚に率直に相談できる環境である」など、具体的な観点に分解することが有効です。
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- 誘導的な質問
- 「所属する組織は社員を大切にしていると思いますか?」といった質問がこれに該当します。こういった質問は聞き方によって、「Yes」と答える方向に引っ張られてしまうことがあり、実態を反映できなくなってしまいます。このような場合では、事実や行動を問う形に変えることが有効で、たとえば「上司は定期的にキャリアについて話す機会を設けている」といった質問に分解して聞くこともよいでしょう。
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- 質問の数が多すぎる
- 組織の課題を網羅的に取りたいがあまり、ついつい質問の数が多くなりすぎる、といったことも起こります。このような場合、回答者が疲れて後半は真剣に答えなくなることもあるため、データの信頼性自体が落ちてしまいます。目的に沿った必須質問に絞ったり、網羅的に聞く場合でもある程度短時間で答えられる形式にしたりすることが求められます。
設問設計は単なる質問づくりではなく、従業員にどんな期待を抱かせるかを決める組織のメッセージ発信でもあります。曖昧・誘導的・過剰といったNGを避け、目的に即した設問を設計することが、サーベイを“ただのアンケート”で終わらせず、実効性のあるものに変えることにつながります。