これまでJTBが持ち得なかったスキルの獲得が今後のビジネスに必須
鈴木貴史氏(以下、鈴木) 御社は現在、2035年に向けて事業ドメインの変革を進めていらっしゃいます。本日は、変革に伴う人事・採用戦略のアップデートについてお伺いします。まず、御社が推進する「交流創造事業[1]」において、採用はどのような位置付けにあるのでしょうか。
注
[1]: 社会にある、さまざまな「交流」シーンにおいて新たな価値を創造する事業。旅行のほか、スポーツ、MICE、教育、地方創生、デジタル、グローバル、HRソリューションを対象領域の例に掲げている。
大八木勢一氏(以下、大八木) 交流創造事業を進めるうえで、採用は事業を持続的に成長させるための将来に向けた重要投資です。そのため、単なる短期的な人員補充ではなく、中長期の経営戦略・事業構想から逆算して必要な人財[2]を定義し獲得していく戦略的な活動に変わってきています。その活動の前提として、事業戦略と連動した人財ポートフォリオの策定も進めているところです。
注
[2]: JTBグループでは、“人材”は「企業や組織の成長を支える財産となる大切なリソース」であるという意思を込め、“人財”と表記。
大八木 勢一(おおやぎ せいいち)氏
株式会社JTB 常務執行役員 人事担当(CHRO)
1992年JTB入社。法人営業、支店長、本社営業企画、人事部門を経て2021年 株式会社JTBデータサービス代表取締役社長に就任。同社の30年の歴史で培った障害者「雇用・定着・活躍」のノウハウをプログラム化し、障害者の定着・活躍サービスを事業化。2024年4月より現職。JTBグループの長期ビジョン「OPEN FRONTIER 2035」を見据えた人財戦略を策定。「違いを価値に、世界をつなぐ」というDEIBステートメントのもと、多様性の掛け合わせで新たな価値を創出し、互いを尊重し自己開示・貢献できる文化を築くべく尽力している。
鈴木 御社が価値の源泉として掲げ、交流創造事業の推進力となる「交流創造Intelligence[3]」においては、コンサルティング的なスキルやデータ活用力が重要性を増しています。その中で、必要となる人財像は従来から変化しているのでしょうか。
注
[3]: 創立114年で培ってきた洞察力(市場予測力、情報収集力、顧客理解力)と専門性(顧客基盤・パートナー基盤・ソリューション、プロデュース力、現場対応力)のこと。これらを組み合わせ、高度化することで、人や地域、組織をつなぐ「交流」を創造し、新たな価値を生み出す。
大八木 明らかに変化しています。従来の当社の強みであるコミュニケーション力やプロデュース力は、前提として保持し続けるべき要素です。しかし、AI技術の発展や事業のグローバル化を考慮すると、それだけでは競争優位性を保ち続けることは困難になりつつあります。既存の強みに加え、新たなスキルを獲得しなければ、競争力の維持・向上や、お客様への提供価値の高度化、事業パートナーとの協業推進は難しいと考えています。
鈴木 現在、特に採用に注力している職種や領域を挙げると?
大八木 大きなくくりでいうと、「IT」「デジタル」「グローバル」の3要素が不可欠になっています。また、事業の高度化に伴い、マーケティングや財務のスキルを持つ人財、M&Aに対応できるプロジェクトマネジメントスキルを持つ人財も必要になってきています。これらの専門スキルに、当社が以前から持つコミュニケーション能力や高度なイノベーション創出力が掛け合わされることが重要だと考えています。
鈴木 そうした人財を獲得するため、どのような取り組みをされていますか。
鈴木 貴史(すずき たかふみ)氏
株式会社TalentX 代表取締役社長CEO
1988年和歌山県生まれ。2012年インテリジェンス(現パーソルキャリア)入社。企業の採用支援に従事した後、日本初のリファラル採用活性化プラットフォーム「MyRefer(MyTalent Refer)」を立ち上げ、「リファラル採用」の概念を日本に広める。その後、株式会社TalentXを設立し、代表取締役社長CEOに就任。現在は、タレントアクイジション(持続可能な優秀人財の獲得)を実現するAIネイティブな統合型タレントアクイジションプラットフォーム「MyTalent Platform」を展開。2025年、東証グロース市場へ上場。著書『戦わない採用 | リファラル採用のすべて』
大八木 取り組みは新卒採用とキャリア採用で分かれます。新卒採用に関しては、従来の説明会やインターンシップに加え、1業界1社限定のキャリアイベント「ジョブフェア」の開催や、全編英語による会社説明会・仕事体験など、新しい施策も開始しました。それぞれの活動を通じて、旅行業にとどまらないJTBの姿が伝わればうれしいですね。
一方、昨年から本格化させたキャリア採用は、リファラル採用やアルムナイ(退職者)採用に着目しています。当社の魅力や親和性を感じる方に入社いただくと心強いですし、最近はアルムナイネットワークも活性化してきました。

