中長期の視点で戦略的に人財を獲得する活動は道半ば
鈴木 先ほど、従来の欠員補充から戦略的な人財獲得へ変わってきているとおっしゃっていましたが、これはまさに「タレントアクイジション」への移行ですね。その際、突き当たった壁などはありますか。
大八木 当社のタレントアクイジションの基盤は、キャリア採用にあると考えています。キャリア採用では、長年培われたプロパー社員中心の組織に、異なるバックグラウンドを持つ方が参画することになるため、「多様性の受容」が極めて重要な課題となります。
しかし、表面上は受け入れつつも、異なる文化や価値観を十分に受け入れ、活かしきるという点では、改善の余地があると感じています。多様な価値観を組織の力に変えていくうえで、まだ取り組むべき課題があります。
また、現業部署は既存事業における即戦力が必要となっていますので、将来を見据えて必要と思える人財を採用しようとしても、理解を得られないケースも往々にしてあります。かつては、顧客とのリアルな接点を重視するあまり、IT・デジタル人財のマネジメントが難しい時期もありました。

鈴木 10年後を見据える経営目線と、足元の課題に向き合う現場目線との間にはどうしてもギャップが生じます。そのギャップを解消するため、現場にHRBPを配置されたりしていますか。
大八木 本年4月より、HRBP機能を正式に設置しました。これまでは個々の人事担当者の行動に委ねていましたが、対応範囲を明文化することにより、目線を合わせていきます。
鈴木 タレントアクイジションは、事業を成長させるうえで必要なポストを定義し、人財を獲得してアサインしていく活動ともいえますが、この観点で何か手応えを感じていらっしゃいますか。
大八木 いま人財戦略のオペレーションとして、人財ポートフォリオやジョブディスクリプションの作成に取り組み始めています。将来を見据えた人財像が明確になってきたので、それを事業部門と共有して話し合った結果、ビジネスモデルと必要人財の要件が合致していくプロセスが見えてきました。ここには手応えを感じています。
また、新規採用者と既存社員のスキルの可視化も必然的に連動して進んでおり、この部分の取り組みにも手応えを感じています。
鈴木 自社の人財アセットも自ずと可視化されていくわけですね。
大八木 はい。その延長線上で、タレントマネジメントシステムについてもグローバルおよび国内グループ全体で構築が進んでいます。これによりグループ全体の人財像を把握できるようになれば、必要な人財がどの領域にどれだけ不足しているかが明確になります。それが次の採用活動につながります。
鈴木 話は少し戻りますが、新卒採用のカルチャーが強固な中でキャリア採用を拡大するにあたり、入社された方をどのように組織へインクルードしていくか、現状の課題感をお聞かせください。

大八木 まさにこれからの課題です。キャリア採用で入社される方は外国籍や障害者などを含め多様なのですが、依然として「日本人」という従来のベースが色濃く残っていて、オンボーディングはきちんと実施しているものの、まだまだマイノリティーなのです。現在、何が課題なのか、その棚卸しと可視化に着手したところです。
また、キャリア採用の方が期待どおりに活躍できているかのモニタリングを現場の部門長に委ねてしまい、人事部門として十分な確認・分析ができていない点も課題として捉えています。
鈴木 リファラル採用やアルムナイ採用を推進することは、キャリア採用で入社した方の定着を円滑にする狙いもあるのでしょうか。
大八木 はい。当社のカルチャーを一定程度理解しているため、安心して働いていただけるのではないかと考えています。また、キャリア採用には全く異なる外のカルチャーを入れるという狙いもあるわけですが、アルムナイ採用の場合、当社のことを理解したうえで外のカルチャーを入れてもらえるので、既存社員も受け入れやすいはずです。ただ今では、全く異なるキャリアを歩んだ方の入社もずいぶん増えてきました。それはそれで、新たな風が吹き込まれています。

