AI時代も変わらず人にしかできないこと・大切なこと

鈴木 ここからは、人事業務におけるAI活用について伺います。御社では人事業務においてAIをどのように活用されていますか。
大八木 現在、採用マッチングや人事異動の配置、定型的なオペレーション業務などにおいて、段階的にAIの導入を進めています。
鈴木 その中で「人にしかできない専門性」をどのように定義されていますか。
大八木 採用活動でいえば、現時点ではAIのみで完結できるとは考えていません。候補者の価値観が当社のカルチャーと合致しているか、真の熱量を持ってビジョンを語っているかといった定性的な部分は、人間でなければ見極めることが困難だからです。また、「あなたに入社していただいたら、このような活躍を期待し、それが会社の将来像にこう直結します」という、個人のキャリアと企業の成長を紐付けたストーリーを言語化し伝えることは、人にしかできないでしょう。人が価値を生む領域に投資し、必要な人財と能力を計画的にどう整えるかの最終的な判断も、人が行わなければならないと思っています。
鈴木 生産活動が変化する中で、人をエンパワーメントする役割がより必要になりますね。この変化する時代において、CHROとして果たすべきミッションは何だとお考えでしょうか。
大八木 長期人財戦略を策定する際、私が最も重視したのが「時間・空間・組織にとらわれない働き方の実現」です。10年後の人を取り巻く環境からバックキャストして考えたのですが、いかなるビジネスモデルに転換しようとも、この働き方を実現することが企業の成長にも不可欠であるという結論に至りました。具体的には、週休3日制の導入や、世界中どこからでも就業できる環境の整備、グローバルな人財ネットワークの構築などです。社員の皆さんにはそういう働き方に適応できるスキルを習得してもらう、という戦略を描いています。
鈴木 AI時代が本格化するほど、地域活性化や営業現場において求められる「共感」や「感性」がより重要になると思われます。今後構築していきたい組織像をお聞かせください。
大八木 人事として10年後に目指す姿は、「世界中の社員がグローバルを舞台に多様な人財と共創し、グループ全体で新たな交流を創造し続けている」状態です。また、海外も含めた全社共通のリテラシーとして「デジタル」「グローバル」「イノベーション」の3つを掲げており、各事業の専門知識に加えてこれらのスキルを備えた人財をキータレントとして採用・育成していく予定です。
しかし、それだけで会社が成長できるわけではありません。当社が大切にしてきた「共感」や「感性」にいっそう磨きをかけることも欠かせません。さらに、当社は「人との縁」を非常に重んじています。経済合理性のみを追求するのではなく、共感や感性、そして人との縁をしっかりと掛け合わせていくことこそが、JTBグループのあるべき人財像であると考えています。
鈴木 大変貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

