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イベントレポート | Developers Summit 2016 資格Zineパネルディスカッション

現場で評価される資格は? 資格で得た知識・スキルが役立つ場面とは? 講師・コンサル・CTOの意見交換で明らかに


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資格で得た知識は経験の「質」を高める

大場:トレーニングだと、どの開発も理想的なケースを想定して工程が進むことはありませんか? それが現場に行ったら「そんな工数はない」なんてギャップに遭遇したことはないですか?

:ああ、それはありましたね。トレーニングでは「テスト工程では仕様書や手順をきっちり作成して」なんていっても、現場ではやっていないことも多かったですから。

市古:裏を返せば、経験豊富な人なら考えて自分で判断できるかもしれない、でも、十分な経験がなくても一定机上で勉強しておけば想定ができる、ってことですよね。「行ったことはないけど一応地図は持っている」みたいな。となると、現場に出ることで、机上で学んだことの価値が2倍3倍になる可能性もあるのではないかと。

:そうですね。ただ、最終的にはやはり経験が伴わなければ成長はできないと思いますね。単に経験するだけでなくて、経験の質というか、いい経験が次のいい経験につながって、それで成長していく。だから、教育で新しい技術を得たり、資格で現場では意識しないような裏側を理解したりして自分を高めることで、同じ経験でも「質」を上げることが重要なのだと思います。つまり、教育、資格は自分の経験の価値を上げたり、経験を通じて得られるスキルの取得スピードを上げたり、そんな副次的な効果があるものとして利用するのが得策なのではないかと。

最上:いま、お話をうかがっていて、城さんは「講師だった」から、現場で通用したのではないかと感じました。ぼーっと受け身で授業を受けて資格を取っただけの人なら、現場ではまったく使えなかったのではないかと。城さんは講師として生徒に説明する必要があったから、原理原則を常に考えていた。それがよかったのではないでしょうか。

 先日、テニスの松岡修造さんとフェンシングの太田雄貴さんの対談をテレビで観たのですが、そこで太田さんが「一度引退して、指導者として客観的に見て説明できるようになったことで、新たな視点を得られた。それが世界大会での金メダルにつながった」とおっしゃっていたんです。まさに城さんも同じなのではないかと。

:TOCの提唱者であるエリヤフ・M・ゴールドラット博士[1]も同じことを言っていますよね。まず最初にできるのは「知識で得ること」、そして、次に「やれるか」、最終的には「教えられるか」だと。たとえば、自分で靴ひもを結べるようになったとして、それを人に説明するのは難しい。ただ、それでいくと「説明をしなければならない」というのが業務として必要だったので、その能力が自然と身についていたというのはあるかもしれませんね。

市古:講師でなくても、現場でも後輩とか「人に教える機会」はあるはずなんですよね。それを意識的に行えるか、教えられるくらい自分自身に知識的な裏付けがあるか。そこが大切なのかなと。長島茂雄さんの「バッ、バッ」的な、再現性ない指導だと普通の人は困っちゃいますからね(笑)。普通は城さんとは逆に、現場で経験してから知識を後付けでつけていくことも多いと思うのですが、どちらにしても「はしご」のように相乗効果があるのではないかと思います。その資格をどうやって活かすのか、そこにコツがあるようも思いますが。

「企業が求める人材」を意識することが資格を活かす条件

最上:資格を現場の仕事やキャリアアップに活かすには、まず欧米と日本で採用の仕方が違うことを認識したほうがいいでしょう。日本ではプロジェクトチームとして「集まった人でがんばりましょう」というスタイルが多い。チームや部署で目標が定められて、足りない部分を個人の努力で補うみたいな、そんな傾向にありますよね。

市古:ありますね。だから、優秀な人に仕事が集中してしまう。で、できる人ほど辛くなる。

最上:欧米では、できる人ほど早く自分の仕事を終えて帰りますからね。というのも、日本とは異なり、欧米では「こういう仕事なのでこういう能力がある人を求めています」というジョブディスクリプションを明示して募集をかけます。だから、それに見合った能力がない人は契約違反として、論理的に首を切られることも少なくありません。今後人材のグローバル化が進む中で、ジョブディスクリプションが一般的になれば、日本人もそこを無視できないでしょうし、履歴書を書く上でも客観的な指標として資格が重要になるのは間違いないと思います。

大場:その辺りは悩ましいですよね。ただ、どちらが正しいかどうかではなくて、「この職種はこれをやるべき」として制約される欧米型より、チームの中で「個々が最大限の力を発揮する」という暗黙のもとで働く日本型のほうが力を発揮する場合もあると思うんですよね。ちなみに、欧米では業務に入ってからもジョブディスクリプションで仕事を分担していくんですか?

最上:その辺は欧米でも若干揺れ続けているんです。近年だとDevOpsなども登場して、開発者と運用者が一緒になって作る手法が流行っていますよね。あれはまさに日本型が見直されているからだといわれています。

大場:ただ、ザッポス社が採用しているような「ホラクラシー型」みたいにフラットな組織で役割を明示して、というのも日本人は苦手ですよね。自分ができることを明示することも、採用する側がそもそも慣れていないですし。

最上:確かに、日本にはまだまだ終身雇用が根強いですからね。最初にとある目的・役割で採用しても、プロジェクトが変わると仕事がなくなるので、その人をどこに持っていこうとか、やるべき仕事があるから人を入れなきゃとか、そんな発想も多いですし。ただ、どっちがよりよいかは別として、グローバル的には明確な分業型が主流で、日本人も今後はその傾向は無視できないのではないかと思います。

[1]: イスラエルの物理学者で、制約条件の理論(TOC)、クリティカルチェーンといったビジネス上の手法を創始した。それらの手法は『ザ・ゴール』や『クリティカルチェーン』などの小説を通じて紹介された。

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間もなくシステム開発案件は世界の人と奪い合う時代に

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

エディター&ライター。児童書、雑誌や書籍、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ライティング、コンテンツディレクションの他、広報PR・マーケティングのプランニングも行なう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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