オフィスにいると生まれる制約をなくすことが目的
――御社のリモートワーク制度はどのように導入が進められたのでしょうか。
阿部直之氏(以下、阿部):2016年10月に全社導入したのですが、その前に、私が所属するアドバンスドテクノロジー開発部(以下、アドテク部)が独自にリモートワークを試験運用しました。アドテク部のメンバーは基本的にエンジニアで、障害の対応等を自宅でやっていたことが試験運用の対象に選ばれた背景にあります。場所にかかわらず仕事ができるのか、場所の制約がなくなることで仕事のパフォーマンスが上がるのではないか、そうしたことの検証が試験運用の主な目的でした。
――場所の制約をなくすとなぜパフォーマンスが上がるのですか。
阿部:単純に言うと通勤時間をなくせます。また、オフィスでは集中しきれない場合もあるので自宅のほうがいいとか、コンディションが悪い時に無理をして出社してパフォーマンスが出せないのなら自宅で集中できるようにしようとか、いろいろな理由があります。また、アドテク部には40数名のエンジニアが在籍しているのですが、競技プログラミング等で世界上位にランキングされている人や技術的に外部からも評価が高い人、量子アニーリングの実活用研究に取り組む人など、いわゆる尖った人が大半なのです。その分、独自の価値観を持っていることも多く、こちらの決めつけで仕事をしてもらうとパフォーマンスが出づらいということもあります。
――40数名のうち、大半が尖ったエンジニアなのですか。すごい集団ですね。
阿部:アドテク部は元々、リクルートグループの中で内製開発を行うためのエンジニア組織として始まりました。その中において、自分たちで作る組織として技術力の高い人を集めてきたという経緯があります。
――リモートワークをするときには、申請などが事前に必要ですか。
阿部:煩雑な手続きは必要ありません。各自が働く場所を自律的に選び、事前に上長に伝えるだけです。Outlookにも入れてもらっていますね。また、入社半年未満といった一部の人を除き、正社員から契約社員までリモートワークすることができます。利用日数にも制限はありません。1日数時間だけリモートワークすることも可能です。
――実際にリモートワークを試験運用してみてパフォーマンスはどうなりましたか。
阿部:エンジニアは元々、テキストで会話する文化があるので、コミュニケーション面はチャットやチケットでやり取りできるため不便はありませんでした。定量値を出せなかったのでパフォーマンスがどれだけ上がったかは判断できないのですが、感想として働きやすかったとか、出社時間を短縮できたとか、良い面はいくつか出ています。どちらかというと100%のものを120%にするというよりも、オフィスの環境ではどうしても制約がついてしまうものを減らせるという効果が大きかったと思います。
なお、リモートワークをする場合、自宅のほか、弊社で提携しているサテライトオフィスが使えることになっています。私がよく利用するのは、子供を遊ばせておくスペースのあるサテライトオフィスです。幼い子供がいるので、これは本当に助かっていますね。