スピーカー
●サイボウズ株式会社 代表取締役社長 青野慶久氏
●さくらインターネット株式会社 代表取締役社長 田中邦裕氏
●株式会社コードタクト 代表取締役社長 後藤正樹氏
モデレーター
●株式会社KDDIウェブコミュニケーションズ 代表取締役社長 山崎雅人氏
本記事の前編はこちらから。
組織内にできる壁を壊すための取り組み
●山崎雅人氏(以下、山崎):部署が違うと話題が合わないことはありませんか。大企業では特に難しいと思います。どんな工夫をすれば、普段は関連の薄い部署間での話題の共有や組織の壁を越えることができるのでしょうか。
●青野慶久氏(以下、青野):横のコミュニケーションの実践は、理屈ではそうするべきだとしても、円滑に進むかどうかはわかりません。人間、気が合う人もいれば合わない人もいるでしょう。少なくとも目指しているところが同じどうかかを確認することが必要です。でなければ、開発が営業と会話をしても、壁が厚くなるだけだと思います。
●田中邦裕氏(以下、田中):サイボウズの企業理念「チームワークあふれる社会を創る」は目指すところとしては大きいと思いますが、これを細かく分解するのですか。
●青野:いいえ。大きいものは大きいままで「味わう」のです。
●後藤正樹氏(以下、後藤):コードタクトのミッションは青野さん公認で「チームワークあふれる『学びの場』を創る」としています。このミッションを社内に浸透させるために取り組んでいることが、各部署のキャッチフレーズを考えることです。例えば、カスタマーサポートの場合、「カスタマーサポートの本質は何か」を全員で考えて、カスタマーサポートのキャッチフレーズを作ります。これを月に1度、違う部署で繰り返すことで、ミッションを理解してもらうつもりです。
●田中:その意味では分かち合わないといけないのか。「『やりたいこと』を『できる』に変える」を大切にしていますが、さくらのビジネスは24時間365日という性質のものなので、年末年始でも誰かが待機していないといけません。去年はお金で解決しましたが、犠牲に基づくマネジメントは良くないですね。全社で話し合い、分かち合うことが重要だと思いました。
●山崎:組織の壁もさることながら、年齢、性別、役職の壁をなくすためにどんな工夫をしていますか。
●田中:青野さんの話に「部長がいなくなった」という話がありましたが、さくらも3年前に、技術本部では部門長を除く役職を撤廃しました。技術本部の人員は全部で300人ぐらいなのですが、フラットになった分、年齢に基づく上下関係が良い意味で希薄になりました。一方で、逆にマネジメントが難しくなった側面もあり、今度は6人の部長を置き、どんなマネジメントが良いかを模索している最中です。
●山崎:青野さんのところはいかがですか。
●青野:基本的には「アメとムチ」の使い分けでしょうか。ムチのほうは「そこに壁があるならお前が壊せ」で、問題を感じるなら自律的に取り組んでもらい、やった人を褒める。究極的にはこれだけでいいと思っています。とはいえ、そう簡単にことが運ぶわけではないので、前の話に出てきた部活動制度、勉強会、各種表彰制度も活用します。アメはちょっと言い過ぎかもしれません。
それからオフィスのレイアウトは、中央に自動販売機とゴミ箱を設置しているので、開発と営業が会話をする場にはなっていると思います。
●山崎:年齢の差による壁を感じることはありませんか。
●田中:さくらは年齢的なダイバーシティはあるほうだと思います。役員は20代〜50代まで、監査役に至っては80代です。サイボウズとの違いを感じるのは女性のエンジニアが少ないことです。管理部門には女性社員がいますが、エンジニアが6割の会社ですから、全社的に見ると性別のダイバーシティがあるとは言えません。
●山崎:後藤さんのところはどうですか。
●後藤:うちは「高齢ベンチャー」と言いますか。社員の平均年齢が40歳ぐらいで、20代は2人ぐらいしかいません。ただし、教育の会社ということもあり、7割の社員に1歳から5歳までの子供がいるので、「子育て」という共通の話題での交流はあります。組織体制ではまだ20人ぐらいなので、僕ともう1人以外は基本的にフラットです。