組織が崩れたときに得た重要な気づき
――小林さんの役職はCCO(Chief Culture Officer)とのことですが、社内における役割を教えてください。
「うるるはカルチャーを大事にしている会社」というメッセージを社内外に浸透させるため、2020年10月にCCOに就任したところです。うるるに参画した2007年当時、僕の役割は事業側の責任者だったのですが、2015年ぐらいから組織づくりにシフトして今に至ります。当時は2017年のマザーズ上場を目指していた頃で、より会社を大きくするためには、すぐに結果が出なくても採用を含めた組織づくりやブランディングに着手しないといけないと考えていました。ここ数年、「うるるスピリット」を浸透させることに取り組んできましたが、CCOを名乗るようになったのは、コロナ禍でリモートのまま社員が増えると、カルチャーが希薄化する懸念が背景にあったためです。
――2015年頃に大量採用を進め、組織が不安定になったことがあったと聞きました。振り返って、なぜそうなったとお考えですか。
当時の人事は正社員が1人、派遣社員が1人の少ない体制で人事を含む管理業務全般を行なっており、採用業務は当然追いつかない状態でした。2014年に最初の資金調達に成功し、2017年のIPOを目指そうとしたとき、2015年は積極採用ができる唯一の年でした。まだ社員は60人くらいの頃でしたが、一気に数十名を採用しようとなり、現場に任せることにしたのです。そのころにはまだ明確な採用基準がなく、フローも見極めのポイントもバラバラで、とにかく優秀な人を採用することが優先されていたように思います。それでうまくいけばよかったのですが、生え抜きの「人への気遣いを大事にする」価値観の人たちと、後から入社した問題解決志向の強い人たちとの間で軋轢(あつれき)が生じる結果になりました。
最も採用してはいけないのが、優秀だけどカルチャーがフィットしない人材といわれますが、その失敗を犯したわけです。採用しても定着せず、たくさんのハレーションに悩まされ、正直事業運営どころではなくなっていました。
――とはいえ、2017年にはマザーズ上場を達成しています。立て直しのきっかけは何でしたか。
一連の出来事から学んだのは「どんなに優秀でも、うるるのカルチャーや行動指針に少しでも合わない人は採用してはいけない」ということです。「うるるのカルチャーとは何か」を自問したとき、あるマネージャーから「うるるスピリットじゃないですか」と言われ、すとんと腑に落ちました。スピリットは2012年頃に作ってはいたものの、形骸化していたのです。当時は私自身も「言ってみて」と言われても出てこない状態でした。経営陣すら言えないものを社員が言えるはずがありません。
とはいえ、書かれていることは単に美辞麗句を並べたものではなく、代表の星(代表取締役社長 星知也氏)が創業期から口癖のように言ってきたことやどんな会社にしたいかを多くの社員を巻き込んで作ったものなので、僕たちのカルチャーの本質を捉えたものにはなっていました。