川本 周(かわもと しゅう)氏
株式会社アトラエ wevox キリコミ隊長
新卒で当時未上場の株式会社アトラエ入社。入社後はIT業界に特化した求人サイト「Green」のコンサルティング営業を担当。その後、新規事業のエンゲージメント解析ツール「wevox」へ異動。現在は、日系大手企業様を中心に、多くの経営者や人事担当者とお会いしながら、エンゲージメントを軸にした組織改善を支援。通常業務とは別に社内のバリュー刷新も担当。
本記事は、2021年2月25日に開催されたイベント「HRzine Day 2021 Winter」でのセッション「4,050万件以上のエンゲージメントデータからみる『自律自走する組織づくり』」をレポートするものです。
なぜいまエンゲージメントが重視されるのか
少子化による労働人口の減少に加え、昨年からはコロナ禍によるリモートワークが広がる中、いかに従業員の気持ちをつかみ、会社や組織に対する共感や帰属意識を高めていくか――いわゆる「従業員エンゲージメント」(以下、エンゲージメント)が企業の課題になっている。だが、そもそもエンゲージメントの本質とは何だろうか。川本氏は「職務への満足感やリラックスした状態と混同されがちだが、あくまで従業員自身が組織や仕事に対して自発的な貢献意欲を持ち、熱意をもって主体的に物事に取り組んでいる状態=活動水準が高いことをエンゲージメント状態と呼ぶ」と定義する。
また、エンゲージメントとは個々人が感じるモチベーションでもなく、会社の従業員に対して与える満足度でもない。そこには会社と個人が互いに理解し、共感した上でつながりを持って活動していく「関係性」がなくてはならないと川本氏は説明する。
同社のエンゲージメント解析ツール「wevox(ウィボックス)」の実績データをもとに行った研究事例でも、売上の伸長率とエンゲージメントには相関関係があることが分かっている。また別の研究では、受注率とも密接な相関関係があるのが見て取れるという。
「こうした知見をもとに現在、厚生労働省や経済産業省もエンゲージメントを推進しています。もちろん自国だけにとどまらず、世界中の企業や組織がエンゲージメントに注目して、経営の中に取り入れている事実があります」(川本氏)
国を挙げて企業や組織がエンゲージメントに着目する背景には、時代の大きな変動がある。その代表的なものの一つが、労働人口の減少だ。かつての「会社が従業員を選ぶ」から「従業員が会社を選ぶ」へと時代は変わりつつある。その結果、労働市場の中では「いかに企業が求職者にとって魅力的な存在であるか」が重視されるようになっているのだ。
いま働き手は、会社を自身の価値観に沿って、より自由に選択できるようになっている。「自分の時間を費やす価値がある会社なのか?」といったシビアな視点で、優秀な人材ほど自身の実力をより発揮できる職場を探し、選択している。企業、そして経営者や管理職は、この大きな職業観・企業観の変化に一刻も早く気づかなくてはならない、と川本氏は語る。