以前よりも重要になった候補者への「共感」
――コロナ禍により、就職・転職の候補者はさまざまな面で変化したといわれます。それをどのようなシーンでどのように感じますか。
コロナ禍以前は通勤時間が短いことや、オフィスの設備・福利厚生など、本質的な採用力とは違うものも材料に候補者を引き付けることができました。確かにオフィスがきれいで、駅からも近いほうがよいですが、オフィスに行かなくても生産性が保てることが明らかになりつつある今、雰囲気よりも本質的な部分に迫るコミュニケーションが求められています。例えば、この人と一緒に働けるか、大事にしていることは何かを確認する候補者が増えたように感じます。
候補者のグッドパッチに対する質問も変わり、働いている人とその人を取り巻くストーリーへの関心が高まったと感じます。もし採用がうまくいっていないとしたら、コロナ前と同じように活動をしているからではないでしょうか。みんなが何かしら不安を抱えていますから、その人の不安に真摯に向き合う「共感」がより重要になっていると思います。
――共感が重要になっている中、御社は採用活動をどのように行っているのでしょう?
もともと、エージェント依存の採用ではなく現場を巻き込むことを重視してきました。具体的には、SNSなどを通じての自主的な情報発信です。メンバーが積極的に情報発信を行っているため、仮に採用選考でご縁がなかったとしてもファンであり続けてくれるのです。これがグッドパッチの強みだと考えています。組織崩壊(後述)の話も含めて、良いことばかりでなく悪いことも情報発信していたので、グッドパッチのことについて外部と共有ができていた。必然的に共感も得られてきたといえるでしょう。コロナ前は気づいていませんでしたが、ファン層の厚さが採用の良いブースターになったと思います。
とはいえ、エージェントに依存していない分、Wantedlyやビズリーチなどを用いたスカウトで人材を求めているため工数がかかるのが悩みです。また、私たちが求めているUIデザイナー、UXデザイナーという人材は市場に多くありません。デザイナーと聞くと、アウトプットをする人を連想する場合が多いのですが、それだけではなく私たちに必要なのは、事業責任者や経営者とディスカッションもできるようなデザイナーです。特にUXデザイナーは「デザイナー」という言葉の印象が強いためか、実際には近しい仕事をしていても、デザイナーに適性があるとは思っていない方も少なくありません。その方たちに、どうしてデザイナー職としてスカウトをしているのか、どこがフィットしているかを丁寧に説明しないといけない分、さらに採用の工数がかかっています。
――採用工数がかかっていることに対して、何か対策などされていますか。
運用面を重要視していて、1通1通書き起こすいわゆる「ラブレター」だと運用が難しいため、会社説明など共通する部分はテンプレートにし、「なぜ、あなたなのか」を伝える最初の数行だけ、一人ひとりに宛てた文章にしています。こうしているのは運用面だけではなく、スカウト経由で応募があった方からヒアリングした情報を参考にしています。スカウトメールはスマホで確認するケースが多いようで、メッセージを開いたときに目に入るのがちょうどそれくらいの文章量なのです。そこで関心を引くことができれば、残りの文章も読んでいただけるのです。
また、スカウト送信にあたっては文面などのレクチャーを必ず実施しているんです。先ほど言いましたように、そもそも候補者を見つけるのに工数がかかっていますし、スカウトメールの送信を担っているマネージャー層は多忙ですから、できるだけ負荷がかからないように効率を高めています。