スタートアップ企業の成長に不可欠だった3代目CTOへの交代
ReproはBtoC企業向けのマーケティングプラットフォームを提供し、世界66カ国、累計7300件の導入を誇るSaaSベンダーだ。2014年の創業以来、「顧客エンゲージメントの向上」に特化し、顧客の属性・行動データに基づいてきめ細やかなメッセージや通知を行なうなど、テクノロジーを活用した企業と消費者のコミュニケーションの最適化に取り組んできた。そんな中で、技術組織を統括するCTOが重要なポジションであるのは、創業時から何ら変わりはない。しかし、組織が成長し、事業も変化する中で、CTOに求められる役割や能力は徐々に変わってきたという。
「初代CTOの三木明は共同創業者ということもあり、起業して1日でも早く市場に受け入れられる製品・サービスをつくることが最大のミッションでした。コミットメント力がとにかく高く、かつスピーディーに開発を進められる高い推進力が不可欠で、まさに三木は適役でした。その後、初期の“死の谷”を突破し、市場で認められるようになると、大量のデータをリアルタイムで処理するという製品特性もあり、とにかく膨大なデータを高速に処理する必要が高じてきました。さらに、エンタープライズ系のお客様も増えてきたことから、安定性も重要な要件となりました。そこで、そうしたニーズに応えうる高い技術力を持つ橋立友宏が、2代目CTOとして着任することになったわけです」(平田氏)
三木、橋立両CTOの時代に重要だったのは開発力。CTOは技術だけでなく、組織マネジメントについても大きな役割を負うが、起業直後は三木氏を中心に8人の開発メンバーそれぞれが突き進む形で機能した。その後、橋立氏はボトルネックになっていた技術に邁進することを優先し、本人の希望どおり、組織マネジメントから距離を置くこともできた。
しかし、技術組織のメンバーは続々と増え、今では50人を突破。組織マネジメントに手を付けないわけにはいかなくなった。
「橋立の力投もあり、技術力には課題がほぼなくなってきた一方で、『なんとなく上手くいかない』という雰囲気が技術組織にあり、外部と比べても開発速度が低下していると感じられました。組織として開発生産性を向上できていないという、新たな壁に突き当たったわけです。そこで、私が開発の現場にヒアリングを行ったところ、優秀なエンジニアが多いのに、組織的な仕事ができずにバリューを出せていないことが明らかになりました。つまり、技術組織のマネジメントが初期のままだったことが、最大の原因となっていたのです」(平田氏)
経営側から見ても、経営視点で情報をキャッチアップできていない、意思決定ができていないと感じられ、技術組織内での意思疎通やモチベーション管理にも問題がある――。平田氏は技術組織のマネジメント刷新の必要性を実感し、一時は自身で担うことも考えたという。しかしながら、すでに同社は200名を超える組織に成長しており、代表取締役とCTOの兼任は現実的ではない。そこで新たに3代目CTOを探すことになり、2021年2月半ばより尾藤正人氏ともう一人が技術顧問として招聘されることとなった。
「お二人とも自身でスタートアップを立ち上げてCEO兼CTOを経験し、会社を売却した経験もあり、どちらかが専任のCTOになっていただければと考えていました。顧問としてしばらくお付き合いする中で、当社の技術組織のマネジメントにフィットしているだろうという判断の下、尾藤に依頼したという次第です」(平田氏)