菅原 要介(すがはら ようすけ)氏
株式会社SHIFT 上席執行役員(人事本部長 兼任)
株式会社インクスに新卒入社し製造業コンサルティングを経験後、2008年SHIFTに参画。品質保証事業を本格化する折に、大手Web制作会社QA部隊の組織化コンサルを手がける。その後、新規事業の立ち上げを経て、事業本部全体の統轄に加え、採用・人事施策・人材マネジメントなど、SHIFTグループ全体の人事領域を管掌している。
上岡 隆(かみおか たかし)氏
株式会社SHIFT 人事本部 人材戦略統括部長
国内大手SIerにてSEとして従事したのち、独立し保育を事業とするNPO法人を設立。2012年にSHIFTに入社し、エンジニアとして複数プロジェクトに参画。300名のチームを率いるなど部門責任者を兼任し、2018年より成長戦略のひとつである人材採用領域を担当。ITの現場と組織づくり両方の知見をもとに、攻めの採用施策で年間1000名以上の中途採用を実現している。
テスト人材を採用するための「CAT検定」とは
――御社では近年1000名規模のエンジニア採用を続けていると伺っています。
上岡隆氏(以下、上岡) 今期はグループ全体で約1700名、単体で約1000名のエンジニアを採用予定です。ここ3年は1000名を超える採用を続けています。そのうち約5%がトップの技術者で、2〜3割がプロジェクトマネージャー、7割前後がテスト人材ですね。
――テスト人材の中にはエンジニア未経験者もいらっしゃるんですよね?
菅原要介氏(以下、菅原) 経験者のほうが断然多いですが、中には未経験者もいます。一般的にエンジニアは100万人くらいいるといわれていて、そのうち約10万人/年が転職層だと思うんです。そうすると1か月あたり1万人近くの転職者がいることになるので、そのうち、どれだけ僕らが採用できるかという発想で考えています。
――御社が独自開発された、テスト実行スキルを評価するための検定試験「CAT検定」は累計6万人以上が受けていると聞きます。CAT検定を開発することになったきっかけは?
菅原 CAT検定をつくったきっかけは、2007年に受けた大手EC企業のソフトウェアテスト工程における業務改善コンサルティングでした。100名前後いたテストエンジニアの業務をヒアリングしてみると、属人化した熟練ノウハウのようなものがたくさんあることに気づいたんです。
実は、弊社の祖業は、製造業向けの業務改善コンサルティング事業です。製造業の仕事を分解してみると、熟練の職人さんにしかできない仕事は全体の2割しかなく、残りの8割は経験の少ない若手でも代替できる、標準化したり数値化したりする作業。適切に分担すれば、製造リードタイムは45日から45時間へというように、大幅に短縮されます。
これと同様に、最も優秀なテストエンジニアの業務を分解して、「テストすべき観点の標準化」と「テスト工程のプロセス改善」を行えばいいじゃないかと。その上でつくったのがCAT検定です。「これができたら、その作業は熟練者から代替できる」という線引きをしながら、検定試験をつくっていきました。
ポイントは「これができたら」のこれですが、実はCAT検定ではテストの知識や技能を問うていません。テスト人材としての素養や頭の使い方に着目しています。テスト設計に関する問題では、仮の条件を提示して「こういう場合にどう考えるか?」をひたすら聞いていますし、テスト実行に関する問題では、バグが出たときに正確に開発者に伝達する能力を見ています。その結果、CAT検定に合格した人材は、熟練者でなくともできる作業を早く覚えてくれます。
――素養を見ているから、経験者にこだわる必要がないし、1000名という大量採用ができるということですね。
菅原 そうです。テスト人材をエンジニア経験者から探そうとすると、激しい競争に巻き込まれますが、素養を見出すことで他業種からの未経験者採用も可能になります。例えば、弁護士出身の方がテスト設計者向けの試験で高い得点を弾き出したり、経理出身の女性がテスト実行者向けの試験で力を発揮したりするんですよ。
――経験者と未経験者で試験問題は異なるのですか。
菅原 いえ、同じです。とはいえ、最近は金融系の大規模エンタープライズシステムのような業務知識を要するテストも出てきているので、検定試験と業務知識の両面を見てはいます。
――なるほど。ちなみにCAT検定の開始はいつからですか。
菅原 この事業を始めたのと同時期なので、2010年頃からです。
――試験内容のチューニングは随時されているのですか?
菅原 しています。若干の外れ値は許容している面もありますが、現場からの信頼感が強いので、検定試験を修正したり、見極めるポイントやハードルを調整したりといったチューニングは欠かせませんね。