「自己成長」を希求する若者たち
最近、とくに若手社員において、仕事内容に起因する退職理由の中身が変わってきているといわれます。一昔前は、「忙しすぎる」「残業でまったく家に帰れない」など、いわゆる仕事の負荷が高すぎることが退職の理由としてよくみられました。
ところが現在では、政府の働き方改革などにより、大企業を中心に、新入社員の週労働時間が年を追うごとに減少しています[1]。一方で離職率は改善されているとはいえず、過去10年間で大企業の早期離職率は増加傾向にあるのです[2]。
つまり、仕事の負荷は下がっているにもかかわらず、離職状況は変わっておらず、むしろ高まっているということです。
私はその理由の1つとして、若者たちのキャリア観や仕事観に変化が生じているからではないかと考えます。というのも、私が授業を受け持っている大学で毎年200人ほどの学生にキャリア観に関するアンケートを取ってみると、「Z世代」と呼ばれるいまの若者は、「将来が見通しづらいいまの社会では、一度入ったら絶対安泰な会社などなく、自らの成長こそが真の安定につながるのだ」という価値観を持っていることが分かります。
従来の若者に存在した「総合職として新卒で会社に入ってさえしまえば、あとはその会社にキャリアを預けていればどうにかなるだろう」という楽観性はもはやありません。「自分のキャリアは自分の責任でつくっていかなければ食いっぱぐれてしまう」という強い危機意識を持っている世代なのです。
彼ら彼女らは自然災害やテロ、不景気など社会不安が多い中で幼少期を過ごしており、それが上記のキャリアに対する焦りに影響しているのかもしれません。実際、新卒学生に対して企業選びの基準を尋ねた複数の調査でも、「自分が成長できる会社であること」が毎年トップにランクインしています。
では、このように、成長を希求する若手社員に対して、職場に定着してもらうために上司や人事ができることは何でしょうか。