カオナビで実現する個別最適な人材育成
一般的なカオナビ活用の第1ステップは「いまある情報の一元化」である。データを見える化し、活用するための土台を整えたうえで、最新の人材データを収集していく。そのうえでさらに重要なのが「システムの使い勝手の良さ」だと新田氏。どれだけ分かりやすく簡単にデータを活用できるかがポイントになる。
新田氏は、カオナビの画面を実際に表示しながら、分かりやすさにこだわったUIを紹介した。
カオナビという名のとおり、画面には従業員の顔写真が並ぶ。顔写真をクリックすると、その従業員のデータが集約されたページが表示される。育成の履歴やスキルの情報、これまで携わったプロジェクトなどを把握できる仕組みだ。
こうした従業員データはPDFやExcelといった既存のファイルで格納したり、テキストベースで更新したりできるほか、CSVで一括更新することも可能。また、画面のレイアウトは使いやすいようにカスタマイズできる。
また、従業員ごとの360度評価の結果をグラフィカルに表示できる機能も紹介された。次図のグラフの緑色が自己評価で、黄色と赤が他の評価者からの評価を表している。
「この例でいえば、課題解決のスキルに関して、自身では評価を低くつけているが、周囲からの評価は非常に高い。課題や伸びしろに従業員自身が気づいて、主体的に動く仕組みをつくれます」(新田氏)
こういった人材データの一元化・可視化の次に大事なのが「情報の集約」である。新田氏は、情報集約のための1つの機能として「パルスサーベイ機能」を紹介した。
「今の仕事に対してやりがいを感じているか」「能力が身に付くと感じているか」といった質問に定期的に回答してもらい、従業員のエンゲージメントがどのように移り変わっているのか把握する。
カオナビではパルスサーベイ機能で収集した結果を自動集計し、過去の調査結果からの推移を視覚的に把握することも可能だ。サーベイ項目は自由に設計できるが、カオナビが蓄積した知見をもとにしたテンプレートを用意。最初はこれを参考に設問をつくる企業も多いという。
続いて紹介されたのは「eラーニング機能」。人材データを集めて、従業員ごとの伸ばすべき能力が見えてきたら、何かしらの育成施策を打つ必要がある。その手段の1つとして、eラーニングの活用も効果的だ。
カオナビでは従業員に向け、受講の必須・任意を設定したうえで講座を配信可能。ラーニングライブラリには、スライドや動画を自由に貼り付けられるため、外部の動画やすでに使っているeラーニングシステムの教材も組み合わせて活用できる。
また、適切な人材配置のための「ポジションマッチング機能」も、組織開発においてポイントとなる。これは、単純に従業員を検索するだけでなく、ポジションに必要な条件を設定して検索すると、候補者の条件との合致度を可視化してくれる機能だ。すべての条件は満たしていないが一部にマッチしたというメンバーも表示されるため、伸びしろを見込んだ大抜擢を検討することも可能である。
さらに、特定の条件で絞り込むだけでなく、組織全体の人材をマッピングできる「クロス集計機能」も持つ。たとえば、横軸は「部署」、縦軸は「評価」と設定して、どのグループにどんなメンバーがいるのか把握することで、異動や育成の計画を効率的に立てることができる。
最後に、「集計機能」が紹介された。集めた統計データを活用するだけでなく、昨今では人的資本情報の開示も求められている。データの集計は「人的資本経営のサイクルを回していくうえで非常に重要」と新田氏は言う。
自社の人材データが整理されると、他社と比較したときの自社の現在地を把握できるようになる。カオナビでは、他社の人的資本の開示データをまとめたオープンサイト「人的資本データnavi β版」を開いている。同サイトではたとえば、女性の管理職の割合の平均を一目で把握できる。新田氏は、「自社のデータを可視化しながら、こうした市場の潮流を踏まえて向かうべき方向を定めてほしい」と提言した。