採用のKPIとは?
KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)は、以前に「物事を端的に判断するためのものさし」と説明させていただきました。採用についても同様で、採用のKPIとは「採用活動がどのくらい効果的に行われているのかを“見える化”するためのものさし」となります。
思い浮かべやすいのは、
- 何人エントリーがあったか
- どのくらいの数の内定を出したか
- 採用にかかった日数はどれくらいか
といった数値でしょう。どれも採用活動の結果を示す指標として使われます。
ただし、これらはあくまで表面的な数字にすぎません。KPIの設計で大事なのは、「何を達成したくて、その指標を追っているのか?」という問いに答えられるかどうかです。
「人が採用できていればいい」という姿勢では、採用の質はなかなか上がりません。KPIがあることで、採用活動のどこに課題があるのかが特定でき、改善のサイクルが回るようになります。
となると、採用における「成功」にどのようなゴールを置くかが重要になります。近年では、そのゴールが「採用完了するまで」から「採用して定着するまで」へと考え方が変化しています。
伝統的に、採用部門の責任は、候補者が内定を承諾した時点、あるいは入社した時点で完了すると考えられてきました。しかし、より戦略的な視点では、採用の成功は入社日を超えて、その後の効果的なオンボーディングと早期の定着までを含むものと捉えられています。
このような考え方の転換が起こった背景には、高い離職コスト(特に早期離職)、迅速な採用が必ずしも価値につながらない(早期離職やパフォーマンス不足)という認識 、そして従業員を長期的な資産と見なす人的資本経営という考え方の浸透があります。
「採用と定着」をゴールとする場合、上記の指標に加え、入社後の指標を追跡する必要が生じます。これには、オンボーディング、研修・能力開発(L&D)、現場マネージャーとのより緊密な連携が求められ、定着状況の結果に基づいて選考基準を調整する可能性も出てきます。