ルールとデータの両輪でAIが機能する——ハーネスの半分は「会社の記録(Company Brain)」
ハーネスを構築する3つの要素のうち、最も見落としがちなのが「データ」です。行動指針やAI利用ガイドラインはあるものの、AIが直接読める形で保持している企業は少ないです。AIのモデルはもう十分に賢いのに、AIエージェントから期待した出力が出ないのは、データ=Company Brainがないからです。
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Company Brainとは、「会社の記録を1箇所に集めたデータベース」であり、全会議の議事録、決めたこと、顧客ごとの状況、商談の進み具合、売上、目標が1つのデータベースに入り、AIがいつでも直接参照できる場所です。第1回で紹介した当社の「議事録中心経営」は、このCompany Brainをつくることと同義です。
ハーネスを構成する3つのうち、基準と権限(ルール)が「会社はこう考え、こう動く」を教え、データ(Company Brain)が「今、何が起きているか」をAIに教えます。
たとえば、リード数や提案の状況、粗利が各営業担当のスプレッドシート、メール、あるいは頭の中に散らばっていたとしたら、経営者がAIに「営業状況を分析して」と頼んでも微妙な答えしか返ってきません。このとき、AIの頭が悪いのではなく、分析するための材料がない状態であることは想像に難くないでしょう。
Company Brainは、AIを複数人で使うなら必須です。データベースがあることで、AIが迷わず、速く、決まった形でデータを取り出せるため、答えが安定します。
Company Brainをつくるときに最も大変なのは、「言葉の定義」です。「案件」とは何か、「クライアント」に見込み客は含むのか。この共通の辞書を最初につくると、AIの答えの精度が目に見えて上がります。また、AIがつくった提案書や分析も、データベースに戻すことが重要です。データベースにないデータは、資産になりません。ただし、Company Brainは会社の重要な記録のすべてですから、アクセス権限だけは絶対に間違えてはいけません。情報システム部門との共同領域ですが、「どの役職・等級の社員が、どこまでの情報にアクセスしてよいか」というガバナンスの設計は、就業規則や組織図をつくってきた人事だからこそ担える領域です。AI時代の新たな「情報アクセスのルール」を組織に実装していくのが人事の役割だと捉えてみてください。
さらにもう1つ、本連載で筆者が最も伝えたいのは、「情報の透明化が、AI活用の定着の鍵になる」ということです。暗黙知が多い会社ほど、「何が正しく、何が良くないか」「今、何が起きているか」を、全従業員とAIが読める場所に置く効果は大きくなります。
人が読めないものはAIも読めません。そして記録が透明になると、経営と現場が同じ情報を見るので「経営はどう考えているか」を伝言する仕事が減り、現場の意思決定が速くなります。
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森 謙吾(モリ ケンゴ)
AINative株式会社 CEO
元PwCコンサルティング 人事コンサルタント / 人事評価SaaS「ハイマネージャー」創業者
慶應義塾大学法学部卒。PwCで4年、人事制度コンサルティングに従事。その後、人事評価SaaS「ハイマネージャー」を創業し、創業から約5年の経緯を経て、2023年にキュービック株式会社へ...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

