人に残る3つの役割は
ここまでを踏まえて、筆者はAIネイティブ組織をこう定義しています。会社の美学・方針・基準がハーネスとして設計され、会社の記録がCompany Brainに集まり、そのとおりにAIが自走している状態です。
人の集合体であることは、もはや組織の必須条件ではありません。筆者自身、1人の社長としてアシスタントと業務委託の専門家と会社を運営し、正社員を採用する予定はありませんが、ハーネスとCompany Brainが機能している以上、これは組織だと考えています。
この見方に立つと、組織の階層はシンプルです。ハーネスの源泉となるコア経営層、ルールと記録の基盤となるハーネス、そのとおりに実行するエージェント。この3層です。従来、経営の意図を現場に翻訳し、現場のアウトプットをレビューしてきたのは中間管理職でした。その「翻訳」と「レビュー」は、方針が文書化され、記録が透明になってAIが直接読めるようになると、ハーネスが担うようになります。組織の形は、経営層と現場が太く中間が細い「砂時計型」に近づいていく。これが筆者の見立てです。
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「では、人間はもう要らないのか」。筆者の考えは違います。人間の役割が、最も本質的な次の3つに集約されると考えています。
- ハーネス設計者:会社の美学・方針・基準を言語化し、何を記録するかを決める人。人事制度設計の経験が最も活きる役割です
- ハーネス更新者:AIの実際のアウトプットと記録を見て、ハーネスを修正する人。組織開発や変革推進の経験が活きる役割です
- ハーネスでは判断できない領域の意思決定者:新規事業、人間関係、倫理判断。AIには任せられない、本質的な経営判断です
筆者は、「人事制度がAIで陳腐化する」とは考えていません。人事制度設計者こそ、最高のハーネス設計者になれると考えています。
人の暗黙知を行動レベルで言語化する技術。何を記録し、誰に見せるかを決める技術。人事が10年、20年と磨いてきたその技術は、今この瞬間、最も希少なスキルになろうとしています。
開発エンジニアでもSIerでもなく、人事や組織開発の人間こそが、AIネイティブ組織の設計者として最前線に立てる。筆者自身、人事制度設計で培った言語化の技術でハーネスを書き、何を記録するかを決めています。これはポジショントークではなく、筆者が自分の会社で実証している現実です。
組織をつくるのではない。ハーネスを設計するのです。それは、人事制度設計の延長線上にある、まったく自然な進化だと考えています。
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森 謙吾(モリ ケンゴ)
AINative株式会社 CEO
元PwCコンサルティング 人事コンサルタント / 人事評価SaaS「ハイマネージャー」創業者
慶應義塾大学法学部卒。PwCで4年、人事制度コンサルティングに従事。その後、人事評価SaaS「ハイマネージャー」を創業し、創業から約5年の経緯を経て、2023年にキュービック株式会社へ...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


