学会で論文発表、大学で寄附講座
――Gunosy Tech Lab(以下、GTL)は、Gunosyの研究所という位置づけになるのでしょうか。
はい。現在20名ほど所属しており、大きく4つのチームがあります。クリックベイトやフェイクニュースなどをテーマに、中長期的な視点で機械学習・データ分析技術を中心に研究開発を行う「R&D(Research & Development)」チーム。機械学習やAIの技術や研究成果をGunosyのプロダクトに取り込む「ML(Machine Learning)」チーム。データ基盤や機械学習の基盤、AI基盤を運用している「DR(Data Reliability)&MLOps」チーム。そして、データによる経営の意思決定をサポートする「BI(Business Intelligence)」チームです。
なお、「グノシー」や「ニュースパス」「LUCRA(ルクラ)」といった弊社のプロダクトを日々開発・運用するチームは、GTLとは別にそれぞれ置かれています。
――GTLにはR&DとMLにあたるチームだけがあるイメージだったのですが、他にもチームがあるのですね。
そうです。AIや機械学習の研究成果をプロダクトに落とし込むところは、データや機械学習に関する知識だけでなく、それを支える基盤など、総合格闘技のように幅広い技術が必要になります。それを組織全体で補い合い、プロダクトとして出すところまでをすべてできるように組織をデザインしてます。
――一方で、GTLとは別のプロダクト開発チームはサービスの質を向上させる、ユーザー体験を高めるといったところに専念している。
はい。ユーザーが新規登録するときの機能など、プロダクト全般の開発を行っています。GTLのほうは裏方といいますか、推薦アルゴリズムや分析を担っています。その中で我々が培ってきた技術は外部企業のサービス改善に貢献できる分野だと思い、いま社外へ提供することを検討しています。
――GTLではAI人材の確保が重要だと思いますが、どのように採用していますか。
もちろん一般的な採用活動も行っているのですが、他には学会に出向いたり、早稲田大学や東京大学などで寄附講座を行ったりしています。そうしたところから、大学生や大学院生にGunosyの研究活動とプロダクト開発のイメージを持ってもらい、先端領域で頑張っている会社という認知を広げています。
――学校や学会へのアプローチは壁が高いという印象です。そのあたりはどうしているのですか。
学会にはスポンサー枠があるので、スポンサー費を払うことでブースを出させてもらえます。我々が大事だと思うのは、スポンサーになるだけでなく運営に参加するなどして、きちんと研究している会社だと認知してもらうことです。実際、弊社のエンジニアは学会で論文を発表しています。
――研究論文の執筆・投稿が普段の業務に組み込まれているのですね。
そうです。研究の内容には大きく2つのアプローチがあります。1つが中長期的な視点に基づいた研究で、もう1つが事業での活用を前提とした研究です。
前者の研究では、事業の成長にすぐ直結するかどうかは不透明だけれども、中長期的には絶対に価値があるといえることに取り組んでいます。例えば、クリックベイトやエコーチェンバーです。これらはすぐには解決せず、収益化も困難なテーマですが、中長期的に価値があるものとして取り組んでいます。GTLではR&Dチームが担当しています。
一方、後者の研究では、すでに論文が発表されたり、異なる領域で手法が提案されたりしたものを、我々のプロダクトに取り込んでいます。さらに、その結果がどうだったとか、これはこういう改善ができるとかいった報告・提案をしています。これは主にMLチームが担当しています。
これらの研究では、権威ある国際会議での論文採択という成果が出ています。中長期的な視点で行った研究ではデータマイニングの国際会議「KDD2019」で論文が採択され、実務的な視点で行った研究では推薦システムに関する国際会議「RecSys 2019」で論文が採択されました。