データサイエンティストだけでなく分析チームを育てる
データ分析のスキルを持つデータサイエンティストを採用したいと考える人事担当者は多い。しかし、重要なのはデータサイエンスの知識よりもむしろビジネス観点を養い、課題発見力を意思決定に使うことと摂待氏は訴える。
ブレインパッドがデータ分析人材育成のための研修サービスを実施する際、顧客企業からよく聞くのが、「分析スキルだけでなく、データを活用して新しいイノベーションを創出できるビジネス接続力がほしい」「データをビジネスで活用できる人材と技術側の人材をうまくコラボレーションさせたい」「効果的な意思決定の材料としてデータは武器になるが、自社のビジネスドメイン知識を理解してほしい」などの意見だ。これらの意見から、多くの企業ではビジネス観点でのデータ活用ができる人材への関心が高い傾向がうかがえると、摂待氏は指摘した。
そして、経済産業省がまとめた企業が求めるデータ活用人材の一覧を整理し、チームをまとめる「事業マネージャー」、データ活用の戦略を考える「プランナー」、結果を活用する「エンジニア」、モデリングを行う「データサイエンティスト」の4つの役割を集めたチームを作るべきだと訴えた。それぞれの役割でどんなスキルが必要かを整理すると次図のようになる。もちろん、これら4つのスキルを全て備えた人物はいない。とかく、モデリングを行うデータサイエンティストのような人材に注目が集まるが、データを使いながらビジネス戦略を立案したり、結果を業務に活用して改善に活かしたりができる人材が求められている。
人材の採用と定着についてはどの企業も悩みが多いことであろう。IPA(独立行政法人情報処理機構)が発行した『IT人材白書2019』によれば、IT企業が今後重点的に取り組む予定のAI人材の獲得・確保方法は、企業規模を問わず、「既存社員の育成」を挙げる回答が最も多い。とはいえ、人員の多い大企業であっても、異動希望者と人材要件がマッチしないという問題を抱える。さらに、大企業なら大学時代の選考に基づく新卒採用も選択肢の1つになるが、中堅以下の場合は母集団形成自体が困難を極めるケースが多い。採用ではなく外部委託も選択肢となるが、先に述べた需給ギャップの問題から人材単価が高騰している。
一方で、人材育成に関する良い材料には、以前よりも学習環境が充実してきたことが挙げられる。10年前は集合研修や書籍を使っての自習が中心であったが、オンライン学習の環境が整備されている。さらに、世界中のデータ分析のプロフェッショナル人材がつながりを持つ場としての「Kaggle[1]」では、スキルを競うこともできる。例えば、あるインターネット関連企業ではデータサイエンス人材の採用強化を目的に、Kaggle参加に業務時間の20〜100%を使うことを認めている。
注
[1]: 企業や研究者がデータを投稿し、世界中の統計家やデータ分析家がその最適モデルを競い合う、予測モデリング・分析手法関連プラットフォーム、およびコミュニティサイト。約40万人が集まっている。