スピーカー
岩本 隆(いわもと たかし)氏
山形大学学術研究院 産学官連携教授
東京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻Ph.D.。2018年9月より山形大学学術研究院産学連携教授。山形大学では文部科学省地域イノベーション・エコシステム形成プログラムの事業プロデュサーとして山形地域の事業プロデュースを統括。
一般社団法人ICT CONNECT 21理事、一般社団法人日本CHRO協会理事、一般社団法人SDGs Innovation HUB理事、一般社団法人日本パブリックアフェアーズ協会理事、一般社団法人デジタル田園都市国家構想応援団理事、「HRテクノロジー大賞」審査委員長、「Digital HR Competition」審査委員等を兼任。2020年10月にISO 30414リードコンサルタント/アセッサー認証取得。
モデレーター
林 幸弘(はやし ゆきひろ)氏
株式会社リンクアンドモチベーション モチベーションエンジニアリング研究所 上席研究員/ISO 30414リードコンサルタント
早稲田大学政治経済学部卒業。2004年、株式会社リンクアンドモチベーション入社。組織変革コンサルティングに従事。現在はリンクアンドモチベーショングループのR&Dのほか、全社の経営戦略の立案・推進を担う。経営と現場をつなぐ「知の創造」を行い、世の中に新しい文脈づくりを模索している。
人材マネジメントに「ROI」の概念を入れるのが人的資本経営
「人的資本経営」という言葉を聞かない日はない昨今だが、人的資本経営の捉え方は人によって差があるのが現状だ。岩本氏は、「日本企業でも昔からいわれている『企業は人なり』を体現すること」が人的資本経営だと言う。近年は、雇用を守ることや従業員の働きやすさにウェイトが置かれがちだが、「一人ひとりの従業員が活躍することこそが『企業は人なり』であり、一人ひとりが活躍できる企業文化をつくることが重要」だと続けた。
今いわれている人的資本経営が昔からの「企業は人なり」と異なるのは、データやファクトを活用していく点だろう。しかし、岩本氏は「データに関しては国際規格に沿って粛々と活用していけば問題ない」と言う。それよりも、「各企業にとっての『企業は人なり』がどうあるべきかを考え、議論していくことが大切」だと力を込めた。
人的資本経営では、人材を「資源」ではなく「資本」として捉える。財務諸表上、人件費は経費として消化されていくため残らないが、人的資本経営は資本に対して投資をして資産化し、その資産を活用して利益を出すという考え方だ。資産に対しての利益という意味では「ROA(総資産利益率)」になるが、投資に対してどれだけ利益が出たのかという意味では「ROI(投資利益率)」ということになる。
「人材マネジメントに、ROIの概念を入れるのが人的資本経営のベースになる考え方であり、この考え方をもとにISOの国際規格もつくられています」(岩本氏)
どの人的資本領域に投資したら企業のROIが高まるのかを考える
ISO 30414では、11の人的資本領域が示されている。
- Workforce availability(ワークフォース可用性)
- Diversity(ダイバーシティ)
- Leadership(リーダーシップ)
- Succession planning(後継者計画)
- Costs(コスト)
- Productivity(生産性)
- Recruitment, mobility and turnover(採用、異動、離職)
- Skills and capabilities(スキル、ケイパビリティ)
- Organizational culture(企業文化)
- Organizational health, safety and well-being(健康、安全、ウェルビーイング)
- Compliance and ethics(コンプライアンス、倫理)
(出典) ISO『ISO 30414:2018 Human resource management - Guidelines for internal and external human capital reporting』, 2018年12月
岩本氏は、「これらの人的資本領域を総合的に見たときに、どのような優先順位を付けて、どのように投資をしたら企業のROIが高まるのか? ということをデータで整理して、投資していくことが大切」だと言う。