労務行政研究所は、各企業の懲戒制度の内容や、ケース別に見た懲戒処分の適用判断などを調査した。
懲戒解雇が適用されるケースの最多は「売上金100万円の使い込み」
次図に記載している30個のケースが起こったと仮定して、被懲戒者にどのような処分をするのか質問した。回答者は過去の事例などから判断している。
最も重い懲戒処分である「懲戒解雇」の適用が多かったケースは、「①売上金100万円を使い込んだ」(75.9%)が最も多く、次いで「⑨無断欠勤が2週間に及んだ」(74.1%)、「⑲社外秘の重要機密事項を意図的に漏えいさせた」(69.4%)が続いた。
懲戒解雇では退職金を「全く支給しない」企業が約6割
諭旨解雇では退職金を「全額支給する」が30.5%と最も多く、「全額または一部を支給する」4.7%と「一部支給する」20.0%を合わせると半数以上が何らかの支給を行っていることが分かった。一方で、懲戒解雇では「全く支給しない」が63.2%と6割以上を占め、「全額支給する」は0.4%、「一部支給する」は1.8%となった。
懲戒段階の設定数は6段階が最多
懲戒段階の設定数としては「6段階」が41.8%で最も多く、以下「7段階」28.4%、「5段階」15.6%と続いた。
設定している懲戒処分の種類を見ると、「懲戒解雇」はすべての企業で設定されており、「譴責」「減給」「出勤停止」もそれぞれ9割以上と多いことが分かる。また、懲戒処分の実施パターンで最も多いのは、「譴責、減給、出勤停止、降格・降職、諭旨解雇、懲戒解雇」の6段階で31.5%となっている。
なお、同調査の概要は次のとおり。
- 調査対象:全国証券市場の上場企業(新興市場の上場企業も含む)3794社と、上場企業に匹敵する非上場企業(資本金5億円以上かつ従業員500人以上。一部「資本金5億円以上または従業員500人以上」を含む)1600社の合計5394社。ただし、持ち株会社の場合は、主要子会社を対象としたところもある
- 調査時期:2023年4月10日~7月5日
- 集計対象:前記調査対象のうち、回答のあった225社
注
[1]: 懲戒の種類として規定されていなくても、「諭旨解雇」など実態として相当する措置を行っている場合は集計に含めた。
[2]: 下段の青字は前回17年調査のもの。17年の「戒告・譴責」には「注意処分」を含む。⑩⑮⑯㉒は前回調査していない。
[3]: 前回17年調査において⑱は「コンピューターに保存されている重要なデータやプログラムを改ざんした」、⑳は「就業時間中、個人のブログやSNS等に日常的に書き込みをしていた」、㉑は「インターネット上で会社や上司・同僚を中傷していた」、㉚は「クレジットカードによる買物のし過ぎで、自己破産の宣告を受けた」として調査。
[4]: 「退職金制度はない」には、「前払い退職金制度」「確定拠出年金制度」を採っている場合を含む。
[5]: 規定で「一部支給することがある」「全部または一部を支給しないことがある」としている場合のみ「全額または一部を支給しない」で集計した。また、規定で「減額することがある」「一部支給しないことがある」としている場合は「全額または一部を支給する」として集計した。「原則『全く支給しない』が、情状により支給することがある」場合など、情状により内容が異なるものは、原則で決めている内容で集計している。
[6]: 「諭旨解雇」は、規定していなくても実態として相当の措置が取られている場合には集計に含めた。
[7]: ❶❷の懲戒処分の種類は、代表的な名称を示した。
[8]: ❷では懲戒処分の実施パターンのうち、上位3位を示した。
[9]: ❷の青丸は実施していることを表す。
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