受け入れ企業の工夫とは
——伝える・受け取るという姿勢を持ったうえで、コミュニケーションを円滑にするためにおすすめの工夫はありますか。
佐藤 細かいテクニックだと、異なる言語の2人が話すときは、どちらかは母国語を話したほうがよいと思います。どちらもある程度話せるからと英語を使うと、どちらもうまく自分の考えを伝えられずにフラストレーションがたまってしまうのは、自分の体験としてもありますね。
大西 日本語はハイコンテキストのコミュニケーションになりやすいので、意識的に短文で伝えるとか、ゆっくり話すとかで、明確に伝えるための取り組みは、受け入れる日本企業が準備すべきことだと感じます。
クライアントの中には、会議のファシリテーターにベトナムの新卒を据えるという工夫をしている企業もいます。ファシリテーターが理解していないと会議が進行できないので、参加者は伝わりやすい言葉で会話するようになり、ファシリテーターはうまく進行するために事前の準備をちゃんとやるようになるなど、良い変化が生まれたようです。
こういった工夫をしながら、こちらの意図・言葉が伝わっているのかどうか、向こうが発したいことが発せてるのかどうかは、特に3ヵ月くらいはすごく気をつけたほうがよいですね。
また、国によってはハラルなど宗教に関する文化の違いがあるので、食事の環境やお祈りの時間をどうやって確保してもらうかといった検討事項もあります。ここでも、言葉の問題と同じなのですが、自分たちの流儀を押し付けすぎず、お互いリスペクトし合って歩み寄り合うことが大事だと思います。
——言語や文化以外に、受け入れる企業が気をつけるべきことはありますか。
大西 情報セキュリティへの認識の違いでしょうか。日本は、個人情報や会社の機密情報の取り扱いへの意識がとても高いです。一方で、海外では軽やかな面があります。お互いに歩み寄りつつも、会社に入ったうえでは絶対守らなければいけないことは、しっかりと教えることも必要です。
——優秀なIT人材だからこそ、情報セキュリティへの感覚の違いに気付くのが遅れてしまいそうですね。これを読んだ企業は、しっかり対策していただきたいです。今回は、貴重なお話をありがとうございました!