隠れ介護とは

「隠れ介護」とは、家族の介護を担いながらも、職場や周囲に知られることなく仕事を続ける状況を指します。多くの職場には、介護者が自身の状況を相談したり共有したりする・できると思える認識や風土がないため、周囲の人がそれと気づくことはまれです。
隠れ介護は、最終的に介護離職の増加につながりうる問題です。総務省の調査によると、年間約10万人が介護を理由に離職しています[1]。また、厚生労働省の調査では、介護離職者の4割が「(仕事を続けたかったが)勤務先の両立支援制度の問題や介護休業等を取得しづらい雰囲気等があった」という理由で離職しているという結果があります[2]。このような状況により、隠れ介護者は、仕事と介護の両立によるストレスから、うつ病などのメンタルヘルス問題を抱えるリスクが高くなります。
職場で見られる隠れ介護者の兆候やサイン
前掲の厚労省調査によると、介護が始まってから介護を理由に離職するまでの期間は、7割が1年未満です。このため、隠れ介護の状況にある従業員の兆候やサインを早期に把握することが重要です。
職場で見られる可能性のある隠れ介護者の特徴として、突然の休暇や早退の増加があります。さらに、以前は積極的だった残業や出張を避けるようになり、「家の事情で」という理由で断ることが多くなる傾向があります。
人事や管理職が把握すべきチェックポイント
隠れ介護者を早期に発見し、適切な支援を行うためには、兆候やサインを知るだけでなく、人事部門や管理職が次のようなチェックポイントを把握し、定期的に確認することが重要です。
大前提として、介護はプライベートの領域ですが、仕事のパフォーマンスに影響するので、それらについて相談や対話ができることが重要です。ただ、従業員側から相談や対話を求めることが難しい場合もあります。そのため、チェックポイントの1つ目として、人事や管理職は勤怠状況の変化を常に把握しておきましょう。遅刻・早退・欠勤の頻度や有給休暇の取得パターン、残業時間の変化などをチェックします。
2つ目のチェックポイントとして、業務パフォーマンスの変化を把握することも重要です。仕事の質や量の変化、締め切りの遵守状況、ミスや報告漏れの増加を確認しましょう。コミュニケーションの変化も見逃せません。同僚や上司とのコミュニケーション頻度、会議や打ち合わせでの発言量、メールの返信速度や内容の変化をチェックします。また、健康状態も重要で、体調不良による休暇の増加、疲労感や集中力低下の兆候、メンタルヘルスチェックの結果を確認します。
このような変化について話題に出すことを相談や対話のきっかけとし、隠れ介護者の早期発見につなげましょう。