AI導入が成功する企業としない企業 その違いは?
友部 さまざまな企業のAI導入支援をされている中で、うまくいっている企業と苦労されている企業とで、どのような違いがあるのでしょうか。
金 先ほど一番大事なのはトップが意思決定して腹をくくることだと申し上げましたが、そこから実際にうまくいっている会社を見ると、社内に生成AIを推進したい熱狂的な人がいらっしゃいます。
そういう人は社内インフルエンサー的な役割を果たしており、会社側が特命大使のようなタイトルをつけているパターンは結構うまくいっています。トップが意思決定しつつ、それを現場で受け止めてしっかりやっていく人、もしくは部署があってがんばっているとうまくいくのだと思います。
友部 逆に導入に苦労されている会社さんについて、お伺いしてもよいでしょうか。
金 基本的にはトップの意思決定が遅かったパターンや、推進部署があったとしても横断的に権限が与えられていないパターンがあります。
ある大手企業とお話しした際、全社的に生成AI活用を見ていく専門部署があったのですが、「特定の部署だけは干渉していない」とおっしゃっていました。それだとせっかく横串でつくった意味がありません。しっかりと権限とセットで組織を設計しないと進まないのだろうと感じています。
友部 AIの導入においてはセキュリティ面や個人データの保護といった課題も出てくると思います。そういった点についてはいかがでしょうか。
金 セキュリティに関しては考慮すべき論点がたくさんありますので、一定の社内ガバナンスのルールとセットで考えなければいけません。日本では海外製のモデルを使っているパターンが多いのですが、世界全体で見るとオープンなモデルがたくさん出てきて、それを自分の会社向けにチューニングして使うことが増えています。そうすると、自社のサーバー環境に構築でき、安全に情報管理ができるはずです。
日本もそこまで進んでいくと、セキュリティリスクをうまく回避できる選択肢も増えていくのではないかという気がします。

今のAIは“思春期” AI時代の組織構造は「砂時計」に
友部 では次に投資家としての視点から、事業戦略と人材戦略のストーリーができている企業について、どのような点に着目されていますか。
金 これは非常に難しい問いです。現状ではまだ人間とAIの理想的な関係性が完全に定まっていない気がしています。
これは、別の経営者がおっしゃっていたのですが、現在のAIは人間でいうところの「思春期」くらいであり、高い能力を持ちつつも人を傷つけてしまったり、意図しない挙動をしてしまったりすることがあります。しかし、この関係性は数年くらいで一気に定まる気がしています。
そうなったときに、世界的なスタンダードをうまく取り入れた企業が大きく伸びていく可能性があり、そこを見たいと思っています。
また、大企業よりも新しいスタートアップ企業に見られる傾向ですが、中間層の管理職が必要なくなってくる会社が出てきています。上層部と現場の実務担当層が分厚い「砂時計」のような形の組織構造を持つスタートアップが何社か生まれており、こういうところが飛躍的に成長して上場してくる世界が訪れるのではないかと予想しています。
友部 おもしろいです。スタートアップの場合だと最初からスリムな形で組織をつくれるため、強みになりますね。CHROがデジタル領域の責任者を兼務してAIを推進するような体制は、投資家から注目されるのでしょうか。
金 注目されていくと思います。業務プロセスがどれだけAI化されているかという指標は利益率に直接影響してくるため、投資家がそこを見始めるというのは当然あると思います。社内の人材がどれだけAI人材かというのを数字に置き換えるのは難しいですが、投資する側としても間違いなく重要な指標になると考えています。
AIと人間の関係性が定まっていく過渡期 チャンスをつかみ取る人事へ
友部 最後にAIを取り入れて活用するという観点で、向こう1年、人事担当者は何を磨いていくべきでしょうか。
金 今はAIという新しい存在と人間との関係性がこれからどんどん決まっていく過渡期にあります。これからさまざまな動きが出てくると思いますが、そこをいち早く捉えて変化に対応できた企業や組織、人が高い競争力を得ていくのだと確信しています。
これは個人的にはピンチではなくチャンスだと思っています。すべての人に同時に開かれた共通のチャンスですので、ぜひつかみ取っていただきたいと思いますし、私自身も会社としてしっかりそのチャンスをものにしたいと思っております。
友部 本日はありがとうございました。

