スキル型人事制度のメリットを活かす2つの仕組み

鈴木 スキル型人事制度は採用面にも影響があるように思いますが、いかがでしょうか。
井口 キャリア入社の方々は自らのスキルを客観的に捉え、主体的にキャリアを選択することに慣れているため、スキル型人事制度との親和性が非常に高いと感じています。同制度の内容やスキルの定義などを求職者の方々にアピールするとともに、マッチングにも活用していきたいと考えています。
一方、新卒採用についても、職務スキルを軸にして、「当社で仕事をすることでこうしたスキルが身に付く」といった点を学生に示していきたいと考えていますが、こちらはこれから検討する段階です。
鈴木 採用活動では、タレントプールの運用についても注力されていると伺いました。
井口 はい。現在、約1万人のタレントプールを構築しています。過去の選考で採用に至らなかった方であっても、許可をいただけた場合には、環境や時期が変わったタイミングで再度当社に興味を持ってくださる可能性を信じて、コンタクトを継続するようにしています。これにより、新たな募集ポストが生じた際、特性やスキルがマッチしている方へ、タレントプールからすばやくスカウトを送れるようになりました。格段の進歩です。
もちろん、この仕組みが機能する前提は、「現在どのようなスキルの人財が不足していて、どのようなスキルの人財が何名欲しいのか」を常に把握できていることです。それが計画的な採用活動につながり、成功確率を高めることになります。
鈴木 自社に不足しているスキル・人財が可視化されているからこそ、ピンポイントな採用活動や社内での人財流動化が可能になるのですね。社内の人財流動性を高める仕組みについても教えていただけますか。
井口 当社ではスキル型人事制度のメリットを最大限に引き出すため、「ポストチャレンジ制度(社内公募制度)」を極めて重視しています。現在、国内外問わず、や研修プログラムを含めて約1000の公募ポストを用意しています。さらに独自のアプローチとして、「4年に1回、すべての社員が必ずポストへのチャレンジについて意思決定しなければならない」というルールを設けています。
鈴木 「4年に1度の全員チャレンジルール」ですか。これは非常にユニークで思い切った施策ですね。
井口 社員の中に「自分はこの仕事しかできない」という固定観念が生まれてしまうのを防ぐことが狙いです。異分野へのキャリアチェンジだけでなく、現在の組織内にとどまりつつ、ワンランク上の役割を目指すことも含め、4年に1度は必ず自らのキャリアと真剣に向き合い、意思表示をしてもらう仕組みにしています。望むポストを勝ち取るためにはスキルを磨く必要がありますから、この制度自体が社員の学習意欲や成長意欲を強力に後押ししています。
鈴木 ただ制度を用意して待つのではなく、全社員に定期的なキャリアの棚卸しを義務付けることで、受動的なスタンスを打破しているのですね。実施後の手応えはいかがでしょうか。
井口 定例異動に占めるポストチャレンジ公募の割合は、制度導入前の約5%から昨年度には20%へと急増しました。実に異動者の5人に1人が自ら手を挙げて希望のポストを勝ち取った計算になります。また、この取り組みには大きな副次効果もありました。
鈴木 副次効果とはどのようなものでしょうか。
井口 受け入れ側の組織や管理職の意識改革です。公募で良い人財を集めるためには、自分たちの部署がいかに魅力的で、どのような成長機会を提供できるかを真剣に発信しなければなりません。その結果、職場環境の改善や組織の魅力向上に努める動機が働きます。さらに、面接を通じて自らと一緒に働く仲間を選ぶプロセスを経ることで、人を見る目が養われ、配属後の連帯感も強まります。「人事に与えられた人財」ではなく「自分たちで引き寄せた仲間」という意識が生まれる効果は極めて大きいと感じています。
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北浦 汐見(キタウラ シオミ)
都内のスタジオに勤務後独立。ポートレート、取材、料理撮影等、都内を中心に活動中。
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市古 明典(HRzine編集長)(イチゴ アキノリ)
1972年愛知県生まれ。宝飾品会社の社員、辞書専門編集プロダクションの編集者を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集に参加。その後、2017年7月にエンジニアの人事をテーマとする「...
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