人と組織の未来を設計するHRへ
ここまで5回にわたり、HR World Summit 2026で得た学びを紹介してきました。その起点となるのが「Humanity」です。そして、そのHumanityを人事戦略へ翻訳し、Culture as Strategyとして組織文化を耕し、人とAIが協働する組織を設計し、最後に人が学び続けられる環境をつくる。一見すると異なるテーマですが、共通していたのは、HRが「人に機会と制度を提供する役割」から、「人と組織が変わる仕組みをつくる役割」へとトランジションしていることでした。
AIによって仕事の進め方や人の役割そのものが変われば、必要な能力も、組織の形も、育成や評価のあり方も変わります。だからこそHRには、決められた制度や施策を運営するだけではなく、それらを事業の変化とつなげながら、「どんな組織をつくるのか」を考えることが求められます。HRもまた、組織を管理・運営する役割から、組織変革をデザインする役割へと変わっていく必要があるのです。
私は、この変化を3つの役割として整理しました。
- 「導入の支援者」から「組織能力の設計者」へ
- 「施策の実行者」から「変革の共謀者」へ
- 「仕事の管理者」から「仕事の編集者」へ
1つ目は、「導入の支援者」から「組織能力の設計者」への変化です。AIを導入する。新しい制度をつくる。必要な人材を採用する。それぞれの施策を実行するだけでは、事業の成果にはつながりません。本連載でも、人とAIの役割をどう分けるか、AIを仕事のプロセスにどう組み込むか、そしてその変化をピープルアナリティクスでどう捉えるかを見てきました。
必要なのは個別の施策ではなく、戦略を実行できる組織能力をどうつくるかという視点です。
2つ目は、「施策の実行者」から「変革の共謀者」への変化です。変革は、正しい制度をつくれば進むわけではありません。本連載第2回で見てきたように、人は変化に不安を感じます。だからこそHRには、経営が描く変化を現場が理解できる言葉へ翻訳し、同時に、変化を阻んでいる制度や慣習の「錨を上げる」役割があります。
経営から依頼された施策を実行するのではなく、経営とともに変革の難しさを引き受け、リードしていく。それが「変革の共謀者」です。
3つ目は、「仕事の管理者」から「仕事の編集者」への変化です。AIによって、これまで人が担ってきた仕事の一部をAIが担うようになります。そのときHRが考えるべきなのは、「何人月必要か」という数字だけではありません。
何をAIに任せ、何を人に残すのか。人に残す仕事には、どんな判断や能力が必要になるのか。そして、その力を仕事の中でどう育むのか。仕事を起点に、人とAIの役割、必要な能力、学び方まで編み直していく。それが「仕事の編集者」という役割です。
AI時代の到来によって、私たちは「人と組織の未来を設計するHR」への転換を求められているのではないでしょうか。
変わり続ける時代だからこそ「Humanity」に立ち返る

私たちを取り巻く環境は、これからも絶えず変化し続けます。だからこそ組織もまた、一度つくって終わりではなく、変化し続けることが求められます。
5回にわたる連載を通して私が最も強く感じたのは、AI時代だからこそ、私たちはテクノロジー以上に「人間」を深く理解し直す必要があるということです。人は何に不安を感じ、何を信頼し、何に意味を見いだせば動き出せるのか。テクノロジーも社会も変わり続ける中で、この問いだけは、HRが手放してはいけないものだと思います。
Humanityから組織を考える。その原点を忘れずに、私自身もこれからのHRのあり方を模索し続けたいと思います。
全5回にわたる連載を最後までお読みいただき、ありがとうございました。この連載が、皆さん自身の組織やHRのあり方を考える、小さなきっかけになればうれしく思います。
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- この記事の著者
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佐藤 邦彦(サトウ クニヒコ)
HumanDriven株式会社 代表取締役 CEO
早稲田大学政治経済学部卒。2008年リクルートに新卒入社。HR領域で営業、企画、マネジメントを経験。2015年からはリクルートホールディングスにてシェアリングエコノミーの事業開発、働き方変革推進のプロジェクトリーダーを務める。2020年にココナラへ参画...
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