ビジネスの意思決定をデータに基づいて行う「データドリブン経営」の重要性が認識されて久しい。しかし、その実践を支える貴重な人材をどのように育成するかに決まった方法論はなく、多くの企業は試行錯誤を繰り返している状況であろう。本記事では、トップの肝いりで取り組みを進めるソニー銀行を例に、データサイエンス人材育成の要点を探るべく、ソニー銀行株式会社 ルゾンカ典子氏(執行役員 マーケティング サイエンス部 コンテンツ企画部 担当)に話を聞いた。
統計知識やモデリング手法よりも重視する能力
――御社が求めるデータサイエンス人材とはどのような人物像なのでしょうか。
私たちはデータサイエンティストを育成しようとしているわけではありません。世の中ではデータサイエンティスト不足が問題視されていますが、データサイエンティストとコミュニケーションしながらビジネスの意思決定に寄与する「リエゾン」的存在の人材を育てようとしています。銀行ですから数字を扱うことは当然として、経験則に頼らずに意思決定をするには、数字をベースにビジネス仮説を立て、解決しなければいけない問題を的確にデータサイエンティストへ伝えることが求められます。
そのために必要なのは、データサイエンティストの仕事をある程度理解し、かつビジネスの意思決定ができる能力です。そうして、データサイエンティストと協業できる人材の育成に取り組んでいます。
米国州立大学にて心理学博士号を取得。その後、シカゴにて大手自動車保険会社において、アクチュアリー商品開発R&Dで顧客・商品分析を担当。帰国後は、外資系大手銀行や生命保険会社において、ビジネスアナリティクス部門の立ち上げ・運営をリード。2017年より現職。
――必要なのは、データサイエンティストとビジネス側の間をつなげる人材だと。
ビジネスには必ず解決しなければならない課題があります。その時に、「売上が下がっている」と伝えるだけでは不十分で、売上の中身やデータによる裏付けなど、データサイエンティストが理解できる言葉に置き換えることが必要です。加えて、仮説を提示した上で検証を依頼する必要がありますが、それはデータを日頃から使っていないとできないことなのです。
重要なのは、統計知識やモデリング手法よりも、むしろ伝える能力と読み取る能力です。仮説を実証するためにどのようなデータが必要かを突き詰めることができれば、そこから先はソニーグループのデータサイエンティストにサポートしてもらうこともできますからね。
ビジネス側も数字を見ていなかったわけではないと思いますが、どれだけ「自分ごと」として捉えることができていたかが違っていたと思います。数字が下がっているとしたら、その裏で何が起きているのか。そこを深掘りして、自社の狙いとお客様との間にギャップができているところまでは突き詰めていなかったのではないでしょうか。そこまでできるようになるには、やる気や興味がないと難しいと思います。
会員登録無料すると、続きをお読みいただけます
-
- Page 1
-
- Page 2
-
- Page 3
-
- Page 4
この記事は参考になりましたか?
- この記事の著者
-
市古 明典(IT人材ラボ ラボ長)(イチゴ アキノリ)
1972年愛知県生まれ。宝飾店の売り子、辞書専門編集プロダクションの編集者(兼MS Access担当)を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集に参加。その後、資格学習書と開発者向け...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
-
冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタントとして活動中。ビ...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

