欲しい人材の採用は他人任せにしない
――最初に、営業以外の人材採用の企画担当が人事部ではなく、お二人がいる次世代事業統括部になったねらいや経緯を教えてください。
進藤圭氏(以下、進藤):この体制になって、もう6~7年経ちます。当社は求人広告の営業が主体の会社で、社員の約8割が営業担当です。そのため、従来は人事部による採用の対象も、基本的に営業担当者でした。ただ、求人広告業であると同時にITの会社でもあるので、営業人材の獲得だけに力を入れていてはまずいのでは、というのが最初の課題でした。
商品開発などは、やはりその業務に適性のある優れた人材が揃わないと始まりません。でも、その採用を他人任せにしていては組織としても成長しない――そう考えて、自分たちで率先してやり始めたのです。私としてはもともと、欲しい人材の採用は欲しい部門自身で行うのが、最もミスマッチが少ないと思っていたこともあり、現在のような形になってきたのです。
――一般的には、欲しい人材について事業部から相談はしても、採用業務そのものは人事部にお任せが多いと思います。事業部門みずからが動くことに、人事部側の抵抗感などはありませんでしたか。
進藤:むしろ助かったと言われたことのほうが多いですね。人事部での採用はどうしても最大公約数を採ることに最適化されていくのが正しく、私たち商品開発部門が求めている、(良い意味で)ヘンな人を発掘するのは難しい。そういう人事部の選考基準では見つけられない人材を発見できるのは、人事部にとってもありがたいとの声をもらっています。
そうした評価もあって、最初は次世代事業統括部だけの採用だったのが、商品開発部門の他職種に対象を広げていきました。システム開発部門やメディアの企画・編集を担当する部門などでも、以前は人事部だけで採用を行っていたのが、現在は事業部と半々で協力し合っています。採用の企画や人選はその職種の部門で、採用一般の事務的な処理などは人事部で、それぞれ得意分野を分け合う感じです。
ものを創る人に刺さる採用企画をやろう
――新卒採用では、120分で完結する「マッハインターン」や、オンラインで受講できる「リモートインターン」など、他社に例のないインターンシップ制度を設けてきました。これらは、どんなきっかけから生まれたのですか。
進藤:マッハインターンは2017~2018年にかけて実施された企画です。以前は、普通にリクナビで新卒向けの説明会を行っていたのですが、集まるのは「バイトル」の営業志望とか、あるいはディップという一部上場企業に入りたいという人。しかし、こちらは商品開発部門なので、たとえばWebサービスを作りたいとか、明確な志向やアイデアを持っている人材に来てほしかった。具体的には、セールストークなんて全然できないけれど、デザインだけはメチャメチャに腕が立つ人とか。そういうことを楽しいと感じる価値観の新卒者に刺さる採用企画をやろうというのが、マッハインターンのきっかけでした。
このねらいが当たって、非常に良い人たちが大勢集まってくれました。たった2時間で一通りのプロダクトを作る体験ができるインターンシップなんて世の中になかったこともあって、年間300~400名がエントリーしてくれました。
――かなりの人数ですが、この企画のどこが一番受け入れられたと思っていますか。
進藤:僕は「学生がやりたいと思っているけれど、やれないことを叶える」というのを企画の基本にしているんです。その点、マッハインターンでは、新規事業やマーケティングに関する一通りのことを2時間で体験できるんです。ふつう、これと同じことをやると2~3日がかりです。しかも、会社によっては参加前に選考があったり、入ったら今度は途中で抜けられなかったりとか、学生からするとあれこれ面倒くさいんですよね。そういったことを全部ひっくり返すところから、マッハインターンは始まっています。そこがこの参加人数につながったのではと思っています。