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インタビュー《組織やチームの編成・運営》| マネージャー教育

なぜ三井住友海上は「育児と仕事の両立支援サポートブック」を作成しマネージャー1200名に配布したのか

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 子育てで急な休み・早退をする同僚に対し、SNSなどでは「子持ち様」と揶揄する声が上がる現在。メンバーに対し、マネージャーはどう接するべきなのか。だが、そもそもマネージャー自身が十分配慮できないこともある。こうした問題に企業はどう向き合えばよいのか。その答えとして、マネージャー1200名に「育児と仕事の両立支援サポートブック」を配布したのが、三井住友海上火災保険株式会社である。同社はなぜマネージャー向けに資料を作成し、配布したのか。サポートブックを通じて、社員にどのような働きかけを行ったのか。サポートブックのプロジェクトを推進した人事部3名の方と、制作を支援した株式会社No Company 代表取締役社長 秋山真氏に話を聞いた。

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充実した制度を実際に活用してもらうために

——貴社は「育児と仕事の両立支援サポートブック」を配布される前から、さまざまな子育て支援施策を行っています。どういったサポートがあるのでしょうか。

宮岸弘和氏(以下、宮岸) 制度としては、妊娠前から職場復帰後までの多様なサポートを設けています。中でも男性育休制度は「最短1ヵ月取得」を掲げているのが特徴です。また、2023年から「育休職場応援手当」を導入し、育休を取得する当事者だけでなくチーム全体へのサポートも行っています。

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 さらに、社員同士が育児と仕事の悩みをざっくばらんに話し合う交流の場「クローバーサロン」を開催しています。全国の社員がZoomで参加して、ロールモデルの先輩の話を聞いたり、育休取得時に工夫したことなどを共有したりしています。

宮岸 弘和氏

宮岸 弘和(みやぎし ひろかず)氏

三井住友海上火災保険株式会社 人事部 企画チーム(スマートワーク推進担当) DE&Iチーム 課長

2008年新卒入社。関西の法人営業部門にてメーカー・総合商社・小売・運送など、幅広い業種を担当し、保険によるリスクヘッジ提案に10年間従事。その後、中央省庁担当として、産官学連携による社会課題解決型の商品・サービスの企画およびマーケット開発を5年間経験。2023年4月より、人事部でスマートワーク推進およびDE&I推進を中心とした取り組みを担っている。

——これだけの施策が充実している中、「育児と仕事の両立支援サポートブック」(以下、サポートブック)を作成することになった背景や課題とは?

長嶋千絵美氏(以下、長嶋) 実は10年ほど前にもマネージャー向けに、産休・育休のサポートブックを作成して配布しておりました。しかし、当時は女性が妊娠したら退職という選択肢も出てくる時代で、男性育休もあまり浸透していないころです。サポートブックの内容も、まずは「産休・育休を取得して、職場復帰する」というキャリアの選択肢を後押しするもの。上司が女性社員のキャリアをともに考える場を持ちましょうと促進するものでした。

 現在は、時代の変化とともに社員の意識も変わり、産休・育休の取得は当たり前になりましたが、新しい課題も見えてきました。そこで今回の「育児と仕事の両立支援サポートブック」を、今の時代に合わせた切り口で制作することになったんです。

長嶋 千絵美氏

長嶋 千絵美(ながしま ちえみ)氏

三井住友海上火災保険株式会社 人事部 給与厚生チーム 課長

2006年新卒入社。入社時より人事部にて給与関連業務を担当。2009年に長女、2011年に次女を出産。育休を経て2013年復職。給与関連業務と並行して2014年~4年間D&I推進を担当。2021年~再びDE&I推進に従事し、主に育児と仕事の両立支援を担当した。現在も人事部に籍を置き、給与システムの統括、制度改定対応などを担っている。

宮岸 また、制度は充実していたものの、それらの制度を使ってもらう職場環境づくりに課題がありました。産休・育休を取得する社員も「周りに迷惑をかけたくない」という心理的負担がありますし、お休み中の社員を支えるメンバーも業務の負担を感じやすい。こういった事態が、マネージャーの課題として顕在化しつつありました。

——なるほど。そうした課題に応える形で、今回のサポートブックはどのような内容にしたのでしょうか。

長嶋 当事者本人が制度を使いたいと思っても、周りに遠慮して使わなければもったいない。なので当事者の周囲の社員にも理解を深めてもらう必要があります。職場全体が運用方法を身に付けることで、制度を使いやすい環境が整っていくと考えました。

 そこで、サポートブックでは当事者社員の体験談や、産休・育休にまつわる世の中の声を取り上げています。単なる制度の説明ではなく、実際の運用やコミュニケーションの仕方に焦点を当てることで、社員の“腹落ち感”を高める内容を目指したんです。

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渡辺麻衣氏(以下、渡辺) 実際に現場のマネージャーから人事に、部下が産休・育休を取得した際の対応について相談が来ることがありました。「営業部門の部下が育休を取得する予定だが、どういう準備をしたらいいだろうか?」といった相談です。こうした悩みを抱えている現場に、実際に産休・育休取得社員をうまくサポートできている事例を届けることで、運用のヒントにしてほしいという狙いがありました。

渡辺 麻衣氏

渡辺 麻衣(わたなべ まい)氏

三井住友海上火災保険株式会社 人事部 人事チーム 課長

2007年新卒入社。人事部にて人事運営業務や女性活躍推進を担当。2016年より、営業企画部にて営業システム開発・保守業務に5年間従事した後、再び2021年に人事部へ戻り、人事運営業務やDE&I推進を担当。人事部在籍中は、採用・異動・退職などの人事運営、人事システム開発提案・保守業務や、育児休業の申請管理・勤務管理・取得推進を担当している。

——なるほど。当事者以外の社員にも働きかける目的で、あえて「マネージャー向け」とうたったわけですね。

渡辺 はい。職場運営の肝はマネージャーです。まずはマネージャーが正しく理解して、周囲の社員に働きかけることで環境が整っていきます。

 当社では、産休・育休を取得したい部下に対して「NO」と言う上司はいないでしょう。しかし、産休・育休の申請を承認した後は、本人からの相談を待つ(受動的)になってしまうケースも少なくない。そうではなくて、もっと能動的に関わってほしいんです。部下から産休・育休の相談を受けたら「こういう制度があるよ」と紹介できるのが理想です。

長嶋 サポートブック自体はマネージャーだけでなく全社員が見られるように掲示しています。ただ、ターゲットがぼやけていると、育休・産休の当事者ではないからとスルーされてしまう可能性もあるので、あえてマネージャー向けと掲げています。

渡辺 また、1人の社員が長期間不在になることは、産休・育休以外のケースでもあり得ます。産休・育休の職場運営は、その他の事態にも応用できるので、会社の組織マネジメント力が高まるのです。

 マネージャーには、産休・育休をきっかけにそういったチームへの良い影響があることも認識してほしいと思っています。

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この記事の著者

北浦 汐見(キタウラ シオミ)

都内のスタジオに勤務後独立。ポートレート、取材、料理撮影等、都内を中心に活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

市古 明典(HRzine編集長)(イチゴ アキノリ)

1972年愛知県生まれ。宝飾品会社の社員、辞書専門編集プロダクションの編集者を経て、2000年に株式会社翔泳社に入社。月刊DBマガジン(休刊)、IT系技術書・資格学習書の編集を担当後、2014年4月より開発者向けWebメディア「CodeZine」の編集に参加。その後、2017年7月にエンジニアの人事...

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岡田 果子(オカダ カコ)

IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

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