4. 訴訟になる前に取っておくべきだった対応(予防策)
(1)労働者性に該当しない就労実態とするべき
書面上は仮に「マネジメント契約」「業務委託契約」などでも、実態が労働者性を帯びていれば、裁判所は「労働契約」と判断します。
本件のように、「グループAの知名度を上げる活動は基本的に全部受けることとし、指示どおりに業務を遂行しなければ、1回につき違約金200万円を支払わされることとなっており、諾否の自由がない」「仕事のスケジュールが決められ、活動内容について具体的な指示を与えられている」「グループAの知名度を上げる仕事であれば、基本的に仕事を断れない」などの状況であれば、指揮監督関係が強いことから使用従属性があると判断され、労働者との労働契約と判断されてもおかしくありません。
労働者性を否定するように、実態について適切に対応しておけば、訴訟の提起には至らなかったかもしれません。
(2)労働組合法上の労働者も要注意
労働組合法では、労働者は次のように定義されています。
(労働者)
- 第3条この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者をいう。
そして、「労使関係法研究会報告書」(平成23年7月25日)によりますと、労働組合法上の労働者性の判断基準は、次のとおりとされています。
(1)基本的判断要素
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- 1事業組織への組み入れ
- 労務供給者が相手方の業務の遂行に不可欠ないし枢要な労働力として組織内に確保されているか。
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- 2契約内容の一方的・定型的決定
- 契約の締結の態様から、労働条件や提供する労務の内容を相手方が一方的・定型的に決定しているか。
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- 3報酬の労務対価性
- 労務供給者の報酬が労務供給に対する対価又はそれに類するものとしての性格を有するか。
(2)補充的判断要素
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- 4業務の依頼に応ずべき関係
- 労務供給者が相手方からの個々の業務の依頼に対して、基本的に応ずべき関係にあるか。
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- 5広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束
- 労務供給者が、相手方の指揮監督の下に労務の供給を行っていると広い意味で解することができるか、労務の提供にあたり日時や場所について一定の拘束を受けているか。
(3)消極的判断要素
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- 6顕著な事業者性
- 労務供給者が、恒常的に自己の才覚で利得する機会を有し自らリスクを引き受けて事業を行う者と見られるか。
裁判の傾向を見ますと、比較的、労働基準法上の労働者性よりも、労働組合法上の労働者性が認められやすい面があります。このため、業務委託契約などでも労働者性が認められることがありますので、団体交渉については注意が必要といえます。