採用・エンゲージメントのAI/生成AI活用事例
「私の感覚値でいえば、HRテクノロジーの活用は、日本に比べて海外のほうが圧倒的に進んでいる。日本では、米国から1〜2年遅れて始まるのが現実ではないか」と語る鵜澤氏。具体的に、人事分野でどのように生成AIが活用されているのだろうか。
採用
- 求人票の生成および無意識のバイアス排除
- あるモバイルの通信会社では、採用担当者が作成するメールの文面が男性的であったことから、「男性優位な会社なのではないか」という印象を与えてしまい、女性の採用がうまくいっていなかった。そこで生成AIを用いてインクルーシブな表現になるよう、メールの文面のアップグレードを図った結果、女性の応募者が17%増加。応募者からの問い合わせ率も増加し、採用プロセスが平均5日間短縮するという効果をもたらした。
- バーチャル採用チャットボット
- あるファストフードチェーンでは、フランチャイズ店舗を含む全店において、アルバイトの採用からオンボーディングのプロセスにAI駆動型のチャットボットを導入。応募者の書類選考や面接の調整、応募者からの質問への回答や情報共有など、すべてのコミュニケーションをチャットボットで行えるようにした。結果、採用プロセスに要する時間が60%短縮。95%の採用候補者がポジティブな体験を実感している。
エンゲージメント
- 従業員の感情分析および意識調査
- ある医薬品製造ソリューション企業では、従業員が声を上げやすいよう対話形式のエンゲージメント調査を実施するためのプラットフォームを導入。AIによる従業員フィードバック分析を行った結果、エンゲージメント調査の回答率が91%まで増加した。エンゲージメントレベルや課題に対する管理職の意識・行動が喚起され、前向きな変化に向けた取り組みが進んでいる。
- 離職の予測
- ある多国籍プロフェッショナルサービスファームでは、従業員の行動を予測・分析するAIアルゴリズムを使用して、離職リスクのスコアリングを実施。AI主導型分析を取り入れたバックテスト(過去データを用いた予測精度の評価)とクロスバリデーション(妥当性の検証・確認)を行ったところ、退職の可能性がある従業員を65%以上の精度で予測し、そのうちの10〜20%を維持・確保できるようになった。

「ただし、AIが万能ではないということは強調しておきたい。特に日本語で書かれたフリーコメントをAIが分析すると、ネガティブ/ポジティブの判断を誤ることが往々にして起きる。昔に比べれば便利になったとはいえ、AIの回答を過信せずに、あくまでもひとつの参考情報として活用し、違和感を抱いたところは人が深掘りしていくことが大切だ」(鵜澤氏)