「どのタスクを誰/AIが担うのか」を検討する方法
Step2-1:Future Workポートフォリオを設計する
Step1で将来実現したい事業戦略およびそのアウトカムを改めて定義したうえで、Step2でそれに資する「仕事」を定義する(これをFuture Workと呼ぶ)。
今ある仕事に対してFuture Workを整理・検討するにあたっては、次の5つの観点(4R1C)が参考となる。
- Retire:将来不要になる仕事か
- Reduce:必要ではあるが、量や頻度を減らす仕事か
- Retain:基本的に維持する仕事か
- Redesign:必要だが、実行方法や構成を大きく変える仕事か
- Create:現在は存在しないが、将来新たに必要になる仕事か
これらを検討し、仕事を分類することで、AIエージェントで今ある仕事を効率化し要員を削減するといった単なる「AIエージェント導入計画」に取り組むのではなく、「Future Workポートフォリオ」、つまり将来のアウトカムに必要な仕事の全体像をつくることができる。
また、AIエージェントは、仕事そのものを直接代替するわけではない。前述で「月次経営報告資料の作成」を取り上げたように、仕事は複数のタスクで構成されている。まず、AIエージェントが人のタスクを代替し、次に人が担うタスクが再構成され、その結果として人が担う仕事の内容が変わる。
では、「どのタスクを社内人材、AIエージェント、外部人材が担うのか」をどのように検討、整理するのか。この点について解説していく。
たとえば、「顧客開拓を行う」という仕事の中に次のようなタスクがあるとする。
- データ収集
- データ分析
- 仮説構築
- 商談
このうち人が担うタスクの判断軸の例として、「最終的な責任を負うか」「行間を読む柔軟な判断が必要か」などが挙げられる。ここで挙げたデータ収集とデータ分析はAIエージェントに任せることができても、商談には相手がおり、その成否は人(担当者)に責任があり、相手がいる中で行間を読んだ柔軟な会話や判断が求められることから、「商談」については社内人材が担うべきという整理ができる。
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こうして将来の事業戦略およびアウトカムに資する仕事は何かを起点に検討し、Future Workポートフォリオ(FWPバージョン1.0)を整理したうえで、各仕事のタスクを見ていくことで、誰がそのタスクを担うのかを検討・整理できる。
また、要員計画という文脈において、AIエージェントによってタスクが減少しても、必ずしも人員削減につながるわけではないことにも留意が必要である。
たとえば、20人分の仕事がAIエージェントによって不要になった場合、20人を直ちに削減するのではなく、まず「自動化によって解放される人材の時間・能力」が発生したと捉え、その余力をリスキルや再配置によって、新規事業、顧客価値向上、イノベーション、リスク管理など、将来必要になる仕事へ移すことも考えるべきである。ここで改めてFWPバージョン1.0をアップデートすることもあるだろう(FWPバージョン2.0)。
Step2-2:Future Roleの設計
Step2-1でどのタスクを誰(社内人材・AIエージェント・外部人材)が担うのかを検討した結果として、社内人材が担うべきタスクが再定義される。こうして社内人材が担うタスクの集積である仕事が再定義され、ひいては担う役割の再検証がなされるべきである。
この役割の再検証・再設計によって特に影響を受ける対象は管理職層であろう。組織の長となるマネジメント職は前述のFuture Workポートフォリオを考え、社内人材、AIエージェント、外部人材の「仕事の配分」の設計・実行が求められる。
専門性を活かして高い期待成果を担うプロフェッショナル職も、AIエージェントの活用が業務遂行に組み込まれたうえで、専門性の発揮で組織の成果に寄与することが求められる。
このように、各等級にはこれまでとは異なる「新たな価値の出し方」が問われることになる。こうして再定義された期待役割を「Future Role」という。
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上野 晃(ウエノ アキラ)
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社、ピープルコンサルティング、ディレクター
大手総合電機メーカー、シンクタンク系コンサルティングファームを経て現職。組織・人事コンサルティング領域で15年以上の経験を有し、人事制度構築を基盤としつつ人材マネジメントの構築・機能化まで一貫した支援に注力。※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


