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人事労務事件簿 | #12

指揮命令下での業務委託契約、労基法上の労働者に該当(大阪地裁 令和2年9月3日)

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 「業務委託契約」で重要なポイントの一つに、委託者からの指揮命令権が発生しないことがあります。今回紹介する裁判例はこの点に抵触し、実態として委託者の指揮命令下で働かせていたことで、受託者から未払い割増賃金および付加金の支払いを求められたケースです。起こりやすい問題ですので、注意するべき点を改めて確認しておきましょう。

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1. 事件の概要

 本件は、業務委託契約をしていたA(以下「A」)が、会社(以下「B社」)との間で労働契約を締結したと主張し、B社に対して、労働契約に基づき、労働基準法(以下「労基法」)の割増賃金の支払いを求めた事案です。

(1)当事者等

 B社は、ホテルの経営等を目的とする株式会社です。

 Aは、平成27年9月11日から、B社の経営する、いわゆるラブホテル(以下「本件ホテル」)にて業務に従事し、平成30年6月29日にB社との契約関係を終了しました。

(2)労働契約の締結等

 平成27年9月11日、AはB社との間で、以下の内容で労働契約を締結しました。

  • 契約期間 平成27年9月11日から同年12月10日までの間
  • 勤務場所 本件ホテル
  • 職種   フロント
  • 雇用区分 時給者(パートタイマー)
  • 賃金   時間給850円(内訳:基本給838円、時間外手当12円)
  • 賃金支払 毎月10日締め、同月25日支払い

 上記労働契約は、上記契約期間の満了後、平成28年6月31日まで期間が更新され、Aの給与は、時間給から月給制へと変更になりました。

(3)業務委託契約の締結

 平成28年7月1日、Aは「C」の屋号を用いて、B社を甲、Cを乙とする「業務委託契約書」に署名押印し、形式上、業務委託契約を締結しました。

 業務委託契約の主な内容は、以下のとおりです。

●業務委託内容
甲は、乙に対し、本件ホテルにおける、以下の内容を委託する。
  • 「フロント管理業務及びお客様への対応に付随する業務」
  • 「駐車場管理業務及びお客様への対応に付随する業務」
  • 「厨房業務及び衛生管理業務」
  • 「調理品やサービス品をお客様の客室まで運ぶ業務及びお客様への対応に付随する業務」
  • 「客室及び共用部の清掃業務」
  • 「客室のクオリティーの点検及び設備点検業務」
  • 「管理業務(従業員の指導及び設備等のメンテナンス及び施設点検業務)」
  • 「その他の業務」
●委託業務の処理
乙は甲の指示に基づき、委託業務を処理する。
乙は天災地変、その他やむを得ない理由により、委託業務の遂行が不可能となった場合は、その理由を記した書面をもって甲の承認を得るものとする。
●各種報告
乙は甲に対して毎日、受託業務報告書にて各種状況の報告を行わなければならない。
●各種保険
労災防止における各種保険は、乙の負担とする。
●委託料
委託料は、月額21万円(税込)とする。ただし、受託業務者の管理は店舗管理者が査定をするものとする。甲は乙に対して、当月分(末日締め)を翌月25日までに乙の指定口座への振込により決済するものとする。
●器具、備品、消耗品及び諸経費
乙が受託した業務を遂行するにあたり、必要となる器具、備品、消耗品等については、以下のとおりとする。
  • 器具及び備品は甲が乙に無償で貸与する。
  • 消託品については甲の支給とする。
  • 諸経費については甲の負担とする。

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この記事の著者

坂本 直紀(サカモト ナオキ)

人事コンサルタント、特定社会保険労務士、中小企業診断士、坂本直紀社会保険労務士代表社員。就業規則作成・改訂、賃金制度構築、メンタルヘルス・ハラスメント対策社内研修などを実施し、会社および社員の活力と安心のサポートを理念として、コンサルティングを行う。 ホームページに多数の人事労務管理に関する情報、規定例、...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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