耳の痛い話を対話に変える「ソラ・アメ・カサ」
そのうえで、私が勧めているのが「ソラ・アメ・カサ」の3段で対話を組み立てる方法です。
まず「ソラ」。観察した事実を、評価を交えずにそのまま伝えます。「先週の提案資料、提出が締め切りを2日過ぎていたね」。ここで「だらしない」「やる気が見えない」といった人格への評価を混ぜると、相手は心を閉ざします。
次に「アメ」。事実の奥にある課題を、相手といっしょに探ります。「何が原因で間に合わなかったんだろう」。締め切りに遅れたという事実の裏には、業務量の偏りがあるかもしれないし、優先順位の付け方の問題があるかもしれない。本人にしか見えていない事情が、ここで言葉になります。
最後に「カサ」。見えてきた課題に対して、次にどう動くかを合意します。雨が降りそうなら、傘を持って出る。課題が見えたなら、行動を決める。ここまでたどり着いて、はじめてフィードバックは「気づいて、直す」の循環として機能します。
このプロセスを踏む際に管理職が陥りやすいのが、「教えたほうが早い」の罠です。アメの段階で部下が考え込むと、待ちきれずに答えを言ってしまう。「要するに優先順位の問題だよね。来週からはこうして」。たしかに早い。しかし、与えられた答えは身に付きません。本人が自分の言葉で課題を語れたときにだけ、行動は変わります。
伝える前に、「8つのRight」を確認
ソラ・アメ・カサで対話を組み立てても、うまくいかないことがあります。原因の多くは、対話の中身ではなく「対話の前」にあります。
私は、フィードバックが機能するための前提条件を「8つのRight」として整理しています。
- Right Initiative——「自分で気づくべき」と思わず、自ら伝えているか
- Right Timing——伝えるべきタイミングを捉えて伝えているか
- Right Attitude——厳しさと暖かさを併せ持つ姿勢で臨んでいるか
- Right Atmosphere——相手が口を開きやすい雰囲気をつくれているか
- Right Relationship——日頃の信頼関係が土台にあるか
- Right Environment——落ち着いて話せる場所を選べているか
- Right Fact——伝聞や憶測は交えず、事実に基づいているか
- Right Mind——相手の成長を心から願っているか
たとえば、信頼関係ができていない相手からの指摘は、内容が正しくても素直に受け取れません(Right Relationship)。半年前の失敗を今ごろ持ち出されても、本人はもう改善のしようがありません(Right Timing)。オープンスペースで周囲に聞こえる声で指摘されれば、内容より「恥をかかされた」が残ります(Right Environment)。
1on1の進め方を見直す前に、この8項目を点検してみてください。チェックリスト化して管理職に配ってもよいでしょう。研修で伝え方を学んだのに現場で機能しない組織はたいてい、この「前提」のいずれかが欠けています。

