1on1を活かすために「引き出す力」を鍛える
ここまでの観点を踏まえたうえで、1on1を有意義な時間にするための具体的な方法をお伝えします。
失敗する1on1の多くは、上司が話す場になっています。業務の進捗を確認し、課題を指摘し、解決策を指示する。部下はうなずき、メモを取り、時間が来たら席に戻る。これは1on1の形をした進捗会議です。部下にとっては「報告の場」でしかなく、回を重ねるほど、本音から遠ざかっていきます。
成功する1on1は、部下が話す場として機能しています。上司は問いを投げ、待ち、引き出す。「最近、仕事のどこに引っかかりを感じている?」「本当はどう進めたかった?」。答えを出すのは部下自身です。上司の役割は、部下が自分で答えを見つけるまでの道のりに付き合うことです。
上司に求められているのは「伝える力」ではなく「引き出す力」だと言い換えてもよいでしょう。多くの1on1研修は伝える技術を教えますが、1on1の成否を分けるのは、むしろ聴く側・引き出す側の技術なのです。
ここまで読んでいただいた方は、すでにお気づきかもしれません。引き出す力は、本連載第1回・第2回で扱った「沈黙の壁」を崩すポテンシャルがあります。
部下が安心して口を開き、自分の言葉で課題を語り、行動が変わる。この小さな循環が職場のあちこちで回り始めたとき、フィードバックはスキルから文化へと変わっていきます。
まずはソラ・アメ・カサに沿ったフィードバックを考え、ご自身の1on1で実践してみてください。現場の管理職にも共有していただければと思います。
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次回は、3本の柱の1つ「VoE(従業員の声)サイクルの確立」を取り上げます。エンゲージメントサーベイを導入したものの、スコアは停滞し改善の兆しが見えない。社員からは「サーベイ疲れ」の声が上がる。サーベイが空回りする本当の理由と、社員の声を経営に届けて組織を動かす「4つの歯車」を解説します。
なお、本連載の土台となる拙著『フィードバック経営 「沈黙の組織」から「高め合う組織」へ』(日経BP)では、沈黙の組織が生まれる要因と処方箋を5部構成で深く掘り下げて解説しています。富士通、キッツ、住友ファーマ、デロイト トーマツ、アストラゼネカ、弥生——業種も規模も異なる6社の経営者が自ら語るフィードバック経営実践事例も収めました。

