システム構築をクラウド上で行うことが増えている現在、Liunxの知識がどれほど必要だろうかと思う向きがいるかもしれない。しかし、LPI-Japan 理事長の鈴木敦夫氏によれば、クラウドを支えているのは、オンプレミスの物理サーバーと同じくLinuxや数々のオープンソースソフトウェアであり、技術者はそれらのアーキテクチャや文化を理解しておく必要があると強調。また、クラウドの普及で技術の抽象度が高まっている現在、基本技術が技術者の間で身につかず空洞化することへの懸念もあるという。
LinuC Version 10.0ではこうした背景を踏まえ、レベル1、レベル2の出題範囲に対して全面的に見直しが行われた。具体的には、いま現場で用いられている/重要度が高くなっているコマンドやツール(AnsibleやZabbix、Postfixなど)を出題範囲に取り込む一方、あまり使われなくなった/重要度を下げたコマンドやツール(FTP、Sendmail、プリンタ管理など)などを除外した。今回の目玉というべき追加項目は「仮想マシン(KVM)」と「コンテナ(Docker)」である。オープンソース文化やクラウドのセキュリティ、(高可用性やスケーラビリティを確保するための)システムアーキテクチャなども出題範囲になった。
これらにより、レベル1で「Linuxサーバーを使える力(運用・管理から簡単な構築まで)」、レベル2で「Linuxサーバー構成が実現できる力(様々なサーバー構築とシンプルな構成)」を認定する。
旧バージョン(V4.0)とVersion 10.0との出題範囲の差分は下図のとおり。なお、レベル1の認定には101試験と102試験の合格、レベル2の認定には201試験と202試験の合格が必要である点は旧バージョンから変わらない。
Version 10.0の詳細な出題範囲(取り上げられるコマンドやツールなども含む)はLPI-JapanのWebサイト(101試験 / 102試験 / 201試験 / 202試験)で確認できる。この出題範囲の章立てや記述も今回見直されたものの1つで、分かりやすく詳細化するともに、出題項目ごとに使用するコマンドやファイルを明確化した。説明文も平易にしたという。
Version 10.0対応の教材については、LPI-Japanから3月にレベル1差分教材、4月にレベル2差分教材が出る予定のほか、動画コンテンツ(Udemy、Schoo)や学習書・問題集(技術評論社、翔泳社)などが今春~今秋にかけて順次提供される。
なお、レベル1、レベル2の各試験に関して、受験時間(90分)、出題数(約60問)、受験料(1万5000円・税別)に変更はない。また、旧バージョンの試験合格とVersion 10.0の試験合格の組み合わせ(旧101と新102など)で認定を受けることも可能。旧バージョンの試験は2021年3月31日まで実施される。
新バージョンリリースを記念した「期間限定受験生応援キャンペーン」も実施。Version 10.0の101試験、102試験、201試験、202試験のいずれか1枚を5%オフ、2枚セットを10%オフで販売する。購入可能期間は3月2日~5月31日。受験可能期間は3月中の購入者は4月1日から1年間、以降の購入者は発行日から1年間。
ここまで触れてこなかったレベル3試験については、出題範囲も含めてすべて現状どおり。ただし、2020年中に見直しを行うことを表明している。
LinuCは、技術者だけでなく経営や人材育成に携わる人も含め100名以上から意見を集めるとともに、IT関連のシステム構築や開発、技術指導、執筆など様々な立場で活躍する50名以上のLinux専門家の協力を得て開発されているという。それだけに、鈴木氏は「クラウド時代を切り拓くすべてのIT技術者に取得していただきたい」「AWSやAzure、GCPといったパブリッククラウドも、(LinuCを通じて)中の技術を理解した上で使えるようになってほしい」とVersion 10.0にかける想いを熱く語った。