体験×行動変容で定量的に効果を測る
一方で、企業がコーチングを導入するには高いハードルが存在すると大塚氏は指摘した。コーチングは個別性が高く、ブラックボックスになりがちな施策のため、効果の測定や可視化が難しいからだ。
この課題に対応するため、CoachHubはコーチングの効果を可視化し、データ分析に注力していると大塚氏は強調する。
「コーチングの効果を分析するうえで重要な指標は2つあります。1つ目はコーチング体験自体の質と量(Coachee Experience)、2つ目はコーチングを通じた行動変容(Coachee Outcomes)です。これら2つの指標を測ることで、社内の定量的な成果にどのように結び付いているのかを検証できます」(大塚氏)
そして成果を分析するうえでは、コーチングの高い機密性と心理的安全性を保ちながらデータを取得するという、この2つのバランスが重要なのだという。
続いて大塚氏は、「コーチング体験」と「コーチングを通じた行動変容」についてどのように測定していくのか、具体的な例を紹介した
「コーチング体験の分析では、セッションの頻度や回数など、期間を通じた使用状況を可視化します。さらに、同様の取り組みをしている他社と比較し、自社の活用度を把握します。我々の研究によると、2週間に1回のペースでコーチングのセッションを受けることが最も効果的であるため、適切な頻度でコーチングが行われているかを確認することから可視化を始めます」(大塚氏)
次に行うのが、各セッションの満足度の測定である。コーチングを受けた後、受講者から定量的、定性的にフィードバックを収集して評価する。その際、従業員のプライバシーを守りながらフィードバックを促す必要があるため、データの収集は匿名で行う必要がある。
続いて大塚氏は、コーチングを通じた行動変容を把握する方法を紹介した。
行動変容を把握するためには、コーチングを開始する前に対象者のアセスメントを実施し、強みと開発が必要な領域を明確に特定することが重要だという。
そしてアセスメントを基に、コーチングを受ける過程で各コンピテンシーの伸長状況を定期的に観測することで、コーチングの効果を測定していく。加えて、職場でのパフォーマンスの変化や、どのような領域で効果を実感しているかといった、コーチングを通じて得られた影響も確認。さらには、コーチング開始前、途中経過、および終了時に至るまでのデータを収集することで、成果や改善点を定量的に把握。コーチングの効果を明確にできる。
「繰り返しになりますが、コーチングの効果を把握するには、『コーチング体験』と『コーチングによる行動変容』の両方を合わせて測定することが重要です。また、従業員エンゲージメントや満足度調査、業績など、会社が重要視する指標において、コーチングがどのように寄与しているのかを分析することも大切です」(大塚氏)