「人を動かす難しさ」を熟知する電通が“攻めのHR”を支援 グループ5社横断で挑む企業文化変革
人的資本経営への関心が高まる一方、人事変革の難しさを感じている企業は少なくない。こうした中、電通グループは2026年3月、「dentsu Japan Human Capital Growthセンター」を発足した。特徴は、グループ5社が培ってきたHR領域の専門性を束ねたことだ。なぜいま、電通グループが人事・組織変革に取り組むのか。そして「広告会社」のイメージを超えて、どんな強みを発揮しようとしているのか。株式会社電通で同センターのリーダーを務める山原新悟氏と、採用支援の専門チーム「採用ブランディングエキスパート」をリードする西井美保子氏、岩邊駿氏に話を聞いた。
各社にあった専門性を束ねて「攻めのHR」へ
——まず、2026年3月に発足した「dentsu Japan Human Capital Growthセンター(以下、センター)」とは、どのような組織なのでしょうか。
山原新悟氏(以下、山原) もともと電通のBX(ビジネス・トランスフォーメーション)領域では、人財ビジョンや組織人財戦略など、人や組織に関するご相談を多くいただいていました。加えて、電通グループ各社にも、人事領域を支援する専門チームがありました。
たとえば電通は、組織・人事戦略や人的資本施策、企業文化、採用など、戦略性やクリエイティブが必要になる領域に強みがあります。もともとマーケティングが基盤の企業なので、「人を動かす」知見を社内変革にも活かせるのが特徴です。
また、電通総研には統合人事ソリューション「POSITIVE」があります。さらにシステムだけでなく、人事戦略やタレントマネジメントを支援するチームもあります。イグニション・ポイントにもHRコンサルティングの専門チームがあり、戦略や制度設計などに強みを持っています。電通デジタルでは、DX人財の育成や人事部門のDXを支援してきました。
セプテーニグループの人的資産研究所では、自社で積み上げてきた人事施策のノウハウやシステムをクライアント向けにも提供しています。各社で出自も強みも異なるからこそ、1社に閉じず、それぞれの専門性を持つメンバーが連携しながら取り組んでいる形です。
これら5社が中心となってセンターを構成し、クライアントの組織変革や企業文化変革を包括的に支援しています。
——センターが立ち上がった背景を教えてください。
山原 企業がパーパスや中期経営計画、事業戦略をつくった後に、「では、人と組織をどう変革するのか」と悩まれるケースは少なくありません。そうしたご相談に応える中で、各組織や会社が別々に動くよりも、ヒューマンキャピタル領域全体をつないで支援したほうが、一体感が出てクライアントにとってもメリットがあると考えました。
そこで、こうした専門性を束ね、「組織人財戦略・人財ビジョン」「人的資本開示」「制度設計」「タレントマネジメント」「企業文化変革」「採用ブランディング」「HRデータ・システム」の7領域を、1つのセンターで支援する形にしたのです。
山原 新悟(やまはら しんご)氏
株式会社電通 第2ビジネス・トランスフォーメーション局 局長
企業の経営層に対して中期経営戦略の策定、企業変革プランの策定と実行、新規事業創出支援など幅広くBX(Business Transformation)領域のアドバイザリーを務める。
また、各社の専門性に加えて、電通グループ自身が進めてきたHR領域の変革の経験もセンターの強みです。これまで電通グループでは、グローバルCHROの谷本が中心となり、企業文化やHR、働き方の変革を進めてきました。そこで培ってきた「for 電通」の実践知と、私たちがクライアントの変革を支援する中で蓄積してきた「forクライアント」の知見を掛け合わせることも、センターを立ち上げた狙いの1つです。
現在も、谷本が進める社内のヒューマンキャピタル施策を私たちが一部支援し、逆にクライアントとのMTGに谷本がアドバイザリーとしてサポートに入ることもあります。
——センターでは、7つの領域をどのような考えで設定したのでしょうか。
山原 最も上に置いているのは「企業成長」です。人の成長の先に企業の成長があると考え、そのために人や組織に何が必要かという全体像から、この7領域を設定しています。
たとえば、人的資本を企業成長にどうつなげるか、必要な人材をどう採用・育成し、活躍してもらうか。そのための制度やシステムをどう整え、企業文化や人財ビジョンをどうつくるか。それぞれの領域は独立しているのではなく、すべてつながっています。クライアントの人事部門も領域ごとに部や課が分かれていることが多いので、連携のさらなる強化に我々が伴走することで、ヒューマンキャピタル全体を支援していくことが重要だと考えています。
——一方で、人事には労務など、企業を支える「守り」の領域もあります。
岩邊駿氏(以下、岩邊) もちろん、会社を守るために必要なHRの仕事はたくさんありますし、そこには長く人事に携わってきた社内のプロフェッショナルの方々がいます。そのうえで、私たちが特に支援したいのは、成長していくためにHRをどう進化させるかという部分です。そこに悩まれている企業は多い。私たちも各領域の専門性を掛け合わせながら、「企業成長のための攻めのHR」を支援していきたいと考えています。
この記事は参考になりましたか?
- インタビュー《企業文化・カルチャー》連載記事一覧
-
- 「人を動かす難しさ」を熟知する電通が“攻めのHR”を支援 グループ5社横断で挑む企業文化変...
- 「誰かが休んでも回る職場」はどうつくる? タカミヤの“組織全体で支え合う”制度と風土づくり
- 数千人規模の急成長でも“組織が崩れなかった”ラクス 秘訣は「カルチャー浸透」
- この記事の著者
-
北浦 汐見(キタウラ シオミ)
都内のスタジオに勤務後独立。ポートレート、取材、料理撮影等、都内を中心に活動中。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
-
山田 優子(ヤマダ ユウコ)
神奈川出身。新卒で百貨店内の旅行会社に就職。その後、大阪に拠点を移しさまざまな業界・職種を経験してきたが、プロジェクトベースの働き方に魅力を感じて2018年にフリーライターに転向。現在はビジネス系取材記事制作を軸に活動しながら、チームで商品企画・開発にも挑戦中。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です


