1歩目を踏み出すために、現在地を知る
最終回の締めくくりに、明日から何ができるかをお伝えします。
まず、自社の現在地を知ることです。私は組織を、2つの軸で4つのタイプに分けて捉えています。縦軸は、VoEサイクルがどこまで回っているか。経営が社員の声を聴き、動き、返せているか。横軸は、フィードバック文化がどこまで日常になっているか。社員同士が率直に伝え合えているか。そして、どちらの軸も、経営理念の共有が土台になります。
社員の声が経営に届かず、社員同士の対話もないのが「沈黙の組織」。社員の声は経営に届くが、社員同士は黙っているのが「個人主義組織」。社員同士は話すが、社員の声が経営に届かないのが「上意下達組織」。両方が回っているのが「高め合う組織」です。自社がどこにいるかが分かれば、次に手を打つべき柱も見えてきます。

現在地がつかめたら、役割を分けて動きます。経営者がやるべきは、理念を掲げるだけでなく、自らの判断でそれを使ってみせることです。人事がやるべきは、経営と現場の橋渡しです。全社の理念を部門の言葉へ、さらに1人ひとりの志へとつなぐ場をつくり、声が変化につながった事実を全社に返す。現場の社員ができるのは、まずバリューに照らして自分で判断してみることです。
一度にすべてを立ち上げる必要はありません。3本の柱のうち、自社に最も足りていない1本から始めればいい。1本が立てば、次の柱にも手が届くようになります。大事なのは、小さくても「声が変化につながった」という事実を1つ、確かにつくることです。その1つが「諦めの壁」に最初のひびを入れます。
社員の声の96%が経営に届かない。連載の冒頭で紹介したこの数字は、裏を返せば、改善できる余地が大いにある、ということでもあります。
沈黙は個人の性質によるものではなく、組織の症状です。症状であるなら、手当てができます。声が回り始めた組織は、意思決定の質が上がり、人が辞めなくなり、現場から新しい提案が生まれ始める。本連載第1回で見た6つの症状が、1つずつ裏返っていきます。あなたの組織の声が回り始める最初の1歩を、明日踏み出していただければ幸いです。
なお、本連載の土台となる拙著『フィードバック経営 「沈黙の組織」から「高め合う組織」へ』(日経BP)では、本稿で紹介した経営理念の実装手順や部門への落とし込み方を、巻末の「組織コンディション診断」と合わせて詳しく解説しています。富士通、キッツ、住友ファーマ、デロイト トーマツ、アストラゼネカ、弥生と、業種も規模も異なる6社の経営者が自ら語るフィードバック経営の実践事例も収めました。この連載を読んで、自社の現在地が少しでも気になった方は、ぜひ手に取ってみてください。
この記事は参考になりましたか?
- フィードバック経営 「沈黙の組織」から「高め合う組織」へ連載記事一覧
-
- 経営理念の実装は「何のために声を上げるのか」の答えを社員に明示するところから始めよ
- 「サーベイ疲れ」の正体は「無視疲れ」 社員の声を変化につなげる「4つの歯車」とは
- 1on1が空回りする理由——「投げ手」だけでは醸成されない、フィードバック文化のつくり方
- この記事の著者
-
三村 真宗(ミムラ マサムネ)
株式会社U-ZERO 代表取締役 CEO 兼 CPO
慶應義塾大学卒業後、創業メンバーとしてSAPジャパン株式会社に入社。マッキンゼー・アンド・カンパニー、ベタープレイス・ジャパン株式会社などを経て、2011年に株式会社コンカーに参画。代表取締役社長として、社員一人ひとりの声を経営に活かす組織づくりを徹...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

