数ヵ月の取り組みで、組織は変わらない
ここで改めてお伝えしたいのは、組織の沈黙は、短期間では変わらないということです。
研修やサーベイを1度や2度実施しただけでは、諦めや恐れの壁は消えません。壁は、社員が長い時間をかけて積み上げた経験でできているからです。一度諦めた人がもう一度声を上げるまでには、「言えば変わる」という経験を何度も重ねる必要があります。
私は前職のコンカーで沈黙の組織を立て直すのに、数年の歳月を費やしました。半年や1年では、手応えはほとんどありません。多くの企業は、効果が出る手前で「効果がない」と判断して手を引き、「やっぱりうちは変わらない」という諦めだけが分厚く残ってしまいます。
私はよく「3ヵ月では変わらない、10年もかからない」とお伝えしています。即効性を求めてはいけないが、永遠に変わらないわけでもない。正しい3本の柱を粘り強く回し続けた組織は、着実に変わりはじめます。
では、人事として明日から何ができるのか。まずは、3本の柱のうち自社に何が足りていないかを見極めることです。3本がすべてそろったときに効果は最大になりますが、一度に立ち上げる必要はありません。1本が立てば、次の柱にも手が届くようになります。
最初の一歩は、もっとも弱い1本に的を絞り、小さくても「声が変化につながった」事例を1つつくること。たとえば、サーベイの結果を放置せず、1つでも現場の声を施策に反映し、「あなたの声でここが変わった」と全社に返してみる。その1つの施策が、諦めの壁に最初のひびを入れることでしょう。
人事は、経営と現場の両方に手が届く立場にいます。経営層に「沈黙は個人の問題ではなく組織の症状だ」と伝え、現場には「声を上げれば変わる」という実感を届ける。その橋渡しをするのが人事の役割です。
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次回からは、経営理念の実装・VoEサイクルの確立・フィードバック文化の醸成の「3本の柱」を1つずつ掘り下げていきます。
第3回で取り上げるのは「フィードバック文化の醸成」です。1on1を導入したのに「やっただけ」で終わる。研修で褒め方を学んでも、現場では褒めない。多くの人事がつまずくこの問題を、文化として根づかせる方法と合わせて解説します。
なお、本連載の土台となる拙著『フィードバック経営 「沈黙の組織」から「高め合う組織」へ』(日経BP)では、沈黙の組織が生まれる要因と処方箋を5部構成で深く掘り下げて解説しています。富士通、キッツ、住友ファーマ、デロイト トーマツ、アストラゼネカ、弥生——業種も規模も異なる6社の経営者が自ら語るフィードバック経営実践事例も収めました。

