日本の厳しい品質要求に応える独自のLinux資格を立ち上げ
――これまでLPICのみだったLinuxの技術者認定試験に、日本独自のLinuCが加わったのは大きな変化ですが、最初にLinuCの創設の背景についてお聞かせいただけますか。
LinuCの掲げるスローガンは「日本の市場に最適化した試験と運用サービスを提供する」。すなわち、日本国内の企業や受験者が期待する試験を新しく開発し、同時に運用面においても、私たちLPI-Japanの信頼性を確かなものにするという目標が込められています。
この目標の実現にあたって重要なのは、試験の信頼性をいかに確保するかという課題です。というのも、LPICの試験は世界中に配信されていますが、試験問題が外部に漏えいするといった問題が、海外では過去に何度も起きているからです。
例えば、LPICの試験問題を暗記により会場の外に持ち出させて、インターネット経由で売りさばく「ブレインダンプ」と呼ばれる手口です。行っていたのは海外の違法業者で外国語の試験ですが、もちろん日本からも販売サイトにアクセスできました。外国語の試験といえども、こうした不正を放置しておけば、我が国におけるLPICと、私たちLPI-Japanへの信頼までが失われかねません。こうした課題を一挙に解決する上で、日本が独自に試験の信頼性や情報セキュリティをコントロールできる体制の構築は急務でした。
――不正に問題を入手した人が受験している可能性があるのでは、認定資格の信頼もおのずと疑わしいものになってしまいます。
日本のビジネスでは、例えばコンピューターを納品する場合に「筐体に小さな擦り傷1つあっても不可」とするような、品質への潔癖さがあります。まして認定資格試験の信頼性となれば、あいまいなままでは済まされません。
また、日本のIT企業では認定資格を昇進や昇格、プロジェクト参加の条件にしていることも少なくありません。Linuxがインフラをはじめさまざまな領域で主流になりつつある現在、技術者の認定資格は性能品質の一部ともいえます。その信用に応えるためにも、LinuCは資格保有者の能力を確実に保証できる仕組みを実現しています。
――ちなみに、LPICはどれくらいの方がこれまで受験してきたのですか。
日本ではこれまで延べ31万名の受験者がおり、累計10万名以上の認定者を出しています。現在の受験者数は、年間で2万数千名の規模を維持しています。これは、我々が知る限り、我が国のベンダー中立のIT資格としては、IPAの情報処理技術者試験に次いで2番目の規模です。また、オープンソースの認定資格の中で、日本のLPIC受験者数は世界最大です。LinuCは、この大きなニーズをLPIC同様に担うことになります。